近年、逆流性食道炎(RE)に伴う酸蝕症(DE)の有病率は報告されている。しかし、両疾患の重症度やDEと非びらん性逆流性食道炎(NERD)との関係は不明である。そこで本研究では、胃食道逆流症疾患(REおよびNERD)とDEとの関連性の解明と、同領域における医科歯科連携の構築を目指し、同一被験者を対象として、医科による内視鏡検査、歯科による口腔内評価を実施し、RE、NERDおよび健常対照者におけるDEの有病率と重症度を調査した。本症例対照研究には、RE患者135名、NERD患者65名、健常対照者40名が参加した。DEの有病率と重症度を評価するためにmodified tooth wear indexを用いた。唾液分泌と唾液緩衝能は内視鏡検査前に評価した。各群におけるDEの有病率と重症度、唾液の性状をピアソンのカイ二乗検定を用いて分析した。その結果、135例(56.3%)がDE患者に分類された(軽症RE55例、重症RE49例、NERD31例)。RE有病率とDE有病率との間には有意な相関がみられたが、NERD有病率とDE有病率との間には有意な相関はみられなかった。REとDEの間には重症度による有意差がみられた。唾液分泌については、軽症RE、重症RE、NERDにおいて、DEの有無に有意差がみられた。唾液緩衝能については、軽症RE、重症RE、NERDにおいて、DEの有無による有意差が認められた。REとDEの有病率および重症度には有意な関連がみられた。ETWや唾液緩衝能などの臨床症状は、REの重症度に依存していた。また、RE患者におけるDEの有病率に関連する因子ならびにDE重症度に関連する因子を評価した結果、唾液分泌量、RE重症度、PPI抵抗性はDE有病率と関連し、年齢、BMI、RE重症度はDE重症度と関連した。唾液分泌量の低下とBMIはDEの有意な関連因子であった。
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