歯周炎は、細菌感染・慢性炎症の場となることで、糖尿病やリウマチなどの全身疾患の増悪因子として働くというPeriodontal Medicineの概念が確立されている。近年では、非アルコール性脂肪肝(Non-alcoholic fatty liver disease(NAFLD))にたいしても、歯周炎がその病態を重症化させることが報告されている。しかし、その分子メカニズムに関しては不明なことが多い。その原因として、有効なマウス実験モデルが少ないことが考えられる。 これまでマウス実験系において、「高脂肪食」を投与することでNAFLDを発症させるモデルが用いられてきた。しかし「高脂肪食は」、NAFLDの増悪因子となる糖尿病/肥満も併発する。この糖尿病/肥満は歯周炎によって影響を受けるため、歯周炎のNAFLDに対する直接的な増悪メカニズムについての検証は困難であった。 そこで研究代表者は本研究において、マウスに「高炭水化物食」を与えることで肝臓代謝に不可を与え、糖尿病/肥満発症前に、NAFLDを単独発症させる実験モデルを樹立することに成功した。また、この「高炭水化物食」投与NAFLD発症マウスモデルに、絹糸結紮による歯周炎を惹起させたところ、NAFLDの症状を増悪させた。この結果は、歯周炎が糖尿病等の他疾患を介することなく、直接的に肝臓代謝に影響を与えることでNAFLDを増悪させることを示唆した。さらに研究最終年度には、その分子メカニズムが、炎症性サイトカインよりも口腔から肝臓に移動した細菌が重要な役割を担う可能性を見出した。
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