研究課題/領域番号 |
21K09896
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
湯本 浩通 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (60284303)
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研究分担者 |
木戸 淳一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (10195315) [辞退]
稲垣 裕司 徳島大学, 病院, 講師 (50380019)
廣島 佑香 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (60545143)
尾崎 和美 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (90214121)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Outer Membrane Vesicle / 歯肉上皮細胞 / 炎症性サイトカイン / シグナル伝達 / NF-kB / 歯槽骨吸収 |
研究実績の概要 |
歯周病原細菌由来Outer Membrane Vesicle (OMV)の病原性と機能解析:歯周病のKey Stone細菌であるPorphyromonas gingivalis (Pg)以外の歯周病原細菌が産生する OMV も STING を介した経路で IL-6 及び IL-8の 産生を活性化するか調べるために,ヒト歯肉上皮細胞株(OBA-9 細胞)を用いて Pg-OMV と Fn-OMV の病原性を比較した。Fn-OMVは,Pg-OMVよりも有意に強くOBA-9細胞のIL-6及びIL-8産生を誘導した。また,STING特異的siRNAによるdownregulationは,Pg-OMV及びFn-OMVによって誘導されるIL-6及びIL-8の産生を64%有意に抑制した。これらの結果は,Pg特異的ではなく,Fn等の歯周病原細菌由来OMVに含まれる核酸によってSTING経路が活性化されることを示唆している。STING特異的siRNAで処理したOBA-9細胞では,Pg-OMVまたはFn-OMVで刺激後にNF-kBのリン酸化がsiRNAコントロールと比較してわずかに減少した。これらの結果は,Pg-OMVまたはFn-OMVによって誘導されるIL-6及びIL-8産生は,OMVに含まれるDNAによるSTING経路を部分的に介してNF-kBシグナルの活性化をもたらしている可能性を示唆している。さらに,歯周炎モデルラットを用いてOMVの歯槽骨吸収に対する影響も検討したin vivo実験の結果,Pg-OMVsを歯肉に注入した群は,健常群と比較して有意に歯槽骨の吸収が認められ,その程度は,絹糸結紮歯周炎群と同程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.歯周病のKey Stone細菌であるPorphyromonas gingivalis (Pg)以外の歯周病原細菌であり,異種菌種との橋渡し(Bridging)としてDental Plaque形成においてKeyとなるFusobacterium nucleatum由来OMV (Fn-OMV)は,Pg-OMVよりも有意に強くOBA-9細胞のIL-6及びIL-8産生を誘導した。 2.STING特異的siRNAによるdownregulationは,Fn-OMVによって誘導されるIL-6及びIL-8の産生を有意に抑制した。さらに,STING特異的siRNAで処理したOBA-9細胞では,Pg-OMVあるいはFn-OMVで刺激後にNF-kBのリン酸化がsiRNAコントロールと比較してわずかに減少した。これらの結果は,歯周病原細菌由来OMVに含まれるDNAが,STING経路を部分的に介してNF-kBシグナルを活性化することにより,炎症性サイトカインの発現誘導をもたらしている可能性が示唆された。 3.Ratの上顎第二大臼歯頬側歯肉にPg-OMVsを注入したin vivo実験では,健常群と比較して有意に歯槽骨の吸収が認められ,その程度は,絹糸結紮歯周炎群と同程度であった。 当初の研究実施計画と上記の結果を考慮すると,おおむね順調に研究は進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
1.歯周病原細菌由来OMVの破骨細胞分化への影響に関して,マウスマクロファージ細胞株(RAW264.7)を用いて,破骨細胞分化マーカーの発現をreal-time RT-PCRやWestern blot法やTRAP染色を用いて解析中である。 2.MPC-polymerでヒト歯肉上皮細胞株をCoatingすることにより,歯周病原細菌由来OMVの炎症性サイトカイン誘導能を抑制効果について,ELISA法等を用いて解析を行い,臨床応用への可能性について検討を行っている。 3.歯周病原細菌由来OMVを注入したマウスの歯肉中の炎症や組織破壊に関する分子の発現・局在については,real-time RT-PCR,Western blot法やELISAにて解析し,in vivoでのOMVの歯周病の発症および進行における役割を検討する。 4.歯周病原細菌由来OMVによる歯肉上皮細胞バリア機能破綻への影響に関して、Tight JunctionやGap Junction等のバリア機能を担う分子の発現や分解を分子生物学的に解析すると共に、上皮透過性の機能試験も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,これまでに購入・使用していた培地や試薬類に加えて,siRNA,SDS-PAGEやWestern Blot試薬等が十分に残っていたために,予定より少額で賄え,また,Fn-OMVによる炎症性サイトカイン発現誘導能の解析とその機序の解明,すなわちシグナル伝達経路の解析を重点的に行った事からも次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度は,歯周病原細菌由来OMVの破骨細胞分化への影響に関して,マウスマクロファージ細胞株(RAW264.7)を用いて,破骨細胞分化マーカーの発現をreal-time RT-PCRやWestern blot法やTRAP染色を用いて解析する研究を継続する為に,Western blot法や染色組織学染色に用いる破骨細胞分化マーカーに対する抗体の購入等に,この繰り越し分と翌年度分として請求した研究費と合わせて使用する計画である。さらに,次年度は,OMVによる歯肉上皮細胞バリア機能破綻への影響に関しても解析を行うため、各種抗体やTranswell、Cell-Insert等の試薬・消耗品が必要である。また,学会や論文での研究成果発表を今年度より多く行う予定であり,これらの事項にも研究費を使用する予定である。
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