研究課題/領域番号 |
21K09904
|
研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 教授 (70513670)
|
研究分担者 |
堀田 正人 朝日大学, その他部局等, 教授 (10157042)
横川 善之 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 名誉教授 (20358310)
近藤 信夫 朝日大学, 歯学部, 教授 (40202072)
新谷 耕平 朝日大学, 歯学部, 助教 (50824455)
高山 英次 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70533446)
上野 恭平 朝日大学, 歯学部, 助教 (70837848)
神谷 真子 朝日大学, 経営学部, 教授 (80181907)
玉置 幸道 朝日大学, 歯学部, 教授 (80197566)
長谷川 智哉 朝日大学, 歯学部, 助教 (80761585)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 層状複水酸化物 / ハイドロタルサイト / Mg-Al系ハイドロタルサイト / Zn-Al系ハイドロタルサイト / フッ素置換型Zn-Al系ハイドロタルサイト / Ca-Al系ハイドロタルサイト / 酸化亜鉛セメント / 歯髄由来幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は層状複水酸化物ハイドロタルサイト(HT)を、有効成分を徐放する歯科用セメントとして応用しようというものである。 本年度は、前年度に引き続き、天然鉱物HT(Mg-Al系HT)を比較対照として、MgではなくZnを含むZn-Al系HTを合成し、さらに、陰イオンをフッ素に置換したフッ素置換型Zn-Al系HT 、Znに変えてCaを含むCa-Al系HTの合成を試みた。 また、合成後の元素分析とZnおよびAlの存在比の算出を済ませたZn-Al系HT試料については、歯科用セメントとしての物性を検討するため、試薬酸化亜鉛ZnOと、既存の歯科用ユージノール系、非ユージノール系根管充填剤やセメントを使用し、試料1:Zn-Al系HT、試料2:試薬ZnO、試料3:前述の歯科用セメントの粉として、それぞれ、練和液はセメントに付属する練和液を用い、硬化時間、圧縮強さを測定した。その結果、酸化亜鉛以外の添加物を含むセメント粉末と比較するとZn-Al系HTは硬化時間が長く、圧縮強さも小さかったが、試薬ZnOのみを粉末とした場合に比べると、硬化時間は短縮し、圧縮強さも上回っていた。酸化亜鉛を粉末とするセメントではキレート結合が硬化機構の本体とされているが、Zn-Al系HTでも硬化することから、Zn-Al系HT を歯科用セメント粉末として応用の可能性を見出せた。 さらに、Zn-Al系HT を培地に浸漬し、段階希釈して、種々の濃度で溶出物を含む培地を作製してヒト由来歯髄細胞や歯肉上皮細胞の培養を行ったところ、細胞増殖が促進される溶出物の濃度帯が見出された。現在、フッ素徐放を目的としたフッ素置換型Zn-Al系HTでも同様の実験を行い、それぞれの細胞に対する作用を検討しており、Ca-Al系HTでも同様に解析を進めていく。また、同様に口腔内細菌に対する作用の検討もP. gingivalis培養系を用いて進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、試料を調整し、物性検討と溶出成分の測定を行い、細胞培養系での検討を行ってきた。順序の前後は多少あるものの当初の研究計画に沿って、順調に研究を進めることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、陽イオン置換型HTの試作と、陰イオン交換によるフッ素、あるいはリン酸などの担持実験を行い、試料の分析を行うとともに、 歯科用セメントとしての機能性評価を行う。 機能評価については、当初の計画ではHT試料作製ごとに細胞培養系での評価と口腔内細菌培養系での評価を行うとしていたが、2つの培養系は操作内容が全く異なるため、本年度は細胞培養系を終始て行った。そこで、来年度は口腔内細菌培養系での実験を主体とし、歯周病原因菌の生育を評価して抗菌作用を検討するほか、菌が産生した硫化物の吸着評価として、それぞれの培養系に、HT粉末あるいは硬化後のHTセメントを所定量投入し、細胞動態、菌数変化や、金銀パラジウム合金との共存下での黒化現象の低減により化合物の硫化物吸着性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では陽イオンや陰イオンの成分の異なるハイドロタルサイト試料を作製し、その物性検討と、細胞培養系での検討、微生物培養系での検討と、大きく3つの実験系を柱として解析を行う計画である。当初の実験実施順は、試料の試作と物性解析を終えるごとに、2つの培養系の実験を実施する予定であったが、試作ハイドロタルサイトの作製が順調であったことから、実験効率を考慮して本年度は物性解析や水中への溶出物の特定とその濃度測定、および次年度予定のものも含め細胞培養系の実験をまとめておこなった。このため、物性解析費用を削減できたことと、本年度購入予定であった微生物培養実験のための消耗品を次年度に購入するため、その費用を繰越すこととなった。これら繰越金については、次年度にさらに研究を進めるため他のイオン種へのイオン交換後の試料の試作と物性解析を行う費用に充て、また微生物培養系での実験に必要な消耗品の購入に充てる。
|