研究実績の概要 |
牛象牙質にΦ0.1㎜の模擬根管を作製し、225Vで通電を行って根管充填し、封鎖性を色素侵入試験およびSEMで評価し、さらに根管壁の性状をEDSで評価した。その結果、通電時間を長くし根管壁からCやOが消失してCaとPのみが検出され、多孔性の溶岩状を呈した。根管充填すると、AH-Plusでは封鎖性が低下したが、メタシールSoftペーストでは溶岩状の小孔に侵入して根管壁まで達して象牙細管内にタグを形成し、良好な封鎖性を示した。 抜去歯に通電して根管壁と歯根表面の温度上昇を計測した結果、225V,1秒の通電で薬液の沸点である100℃まで根管壁の温度が上昇しても、5秒間隔で通電すると歯根表面の温度上昇は10回通電後に最大55℃で、2回の通電ごとに薬液を交換すると45℃以下と十分に安全な温度であった。 模擬根管内にS.mutansの厚いバイオフィルムを形成して225Vで通電を行うと、1秒でほとんどの細菌が消失し、残存した細菌もバイオフィルムが破壊されて細菌が散在する状態となり、5秒の通電ではすべての細菌が消滅した。 イヌの根管内を細菌感染させて根尖性歯周炎を惹起させ、高周波電流を通電して根尖部3mmは根管形成を行わずに根管充填した。9週後にエックス線画像で根尖部骨欠損の縮小状態を評価した結果、通電位置が根尖から2.5mm歯冠側でもほぼ100%の歯根で骨欠損の縮小または消失が認められ、根管拡大形成を通法で行った場合よりも高い成功率を示した。病理組織学的にも根尖部骨欠損内の炎症の程度は大きく改善し、Gram染色で主根管の細菌は消滅し直径50μm程度の根分岐では細菌がほぼ消滅していた。しかし、10μm程度の根尖分岐内にはGram陽性や陰性の細菌が観察された。 これらの結果より、感染根管治療の成功率の向上に大きく貢献するものと考えられた。
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