研究課題/領域番号 |
21K09920
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
高木 理英 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (00569080)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ドーパミン(DA, dopamine) / 好中球性炎症 / ドーパミンD1様受容体 / ドーパミンD2様受容体 / Th17 |
研究実績の概要 |
神経伝達物質の一つであるドーパミンは抗原提示相に作用すると、未熟CD4+T細胞から寄生虫感染防御のためのTh2と細胞外細菌進入防御のためのTh17を誘導する。不適切なTh2,Th17応答はそれぞれアレルギー疾患や好中球性炎症の発症を誘導するが、ドーパミンD1様受容体拮抗薬であるSCH23390がTh2応答およびTh17応答を抑制し様々な好中球性炎症の病態を改善させる事を明らかにした。3種類のドーパミンD2様受容体(D2, D3, D4) の中で、ドーパミンD2受容体に焦点を当てドーパミンD2受容体の活性化による好中球性炎症抑制機構を解析する事を計画し、今年度はドーパミンD2受容体シグナルによる炎症性サイトカイン抑制メカニズムの解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度行ったドーパミンD2様受容体シグナルによる抗原提示細胞の機能調節機構の解析において「タンニン酸」は、未熟CD4+T細胞からのTh17分化を抑制する事がわかったが、この分化抑制がドーパミンD2受容体アゴニスト活性によって誘導されることを示すために以下の解析を行った。 1. マウス未熟CD4+T細胞、およびマウス混合リンパ球反応にドーパミンD2受容体アゴニストを作用させた後、Th2、およびTh17の分化を誘導し、ドーパミンD2受容体アゴニストがTh17の分化を抑制することの解析。2. 上記の1.における分化の抑制が、ドーパミンD2受容体シグナル伝達の阻害剤で解除させることをELISA法で解析。 この解除を促す阻害剤の検討に時間を要したため。
|
今後の研究の推進方策 |
【イムノシナプスにおけるドーパミンD2受容体の機能解析】 免疫細胞においてドーパミンD2受容体が機能的に働いていることを示すために以下の実験を行う。1. 蛍光抗体を用いた蛍光顕微鏡観察、およびフローサイトメトリーで、CD4+ヘルパーT細胞、および抗原提示細胞で、ドーパミン産生、各種ドーパミン受容体(D1, D2,D3, D4, D5) が発現していることを解析する。2. CD4+ヘルパーT細胞と抗原提示細胞を混合してイムノシナプスを形成させ、蛍光抗体を用いた蛍光顕微鏡観察でイムノシナプス内にドーパミンD2受容体が局在していること、またドーパミンが分泌されていることを解析する。 【ドーパミンD2受容体アゴニストによる歯周病に対する効能解析】 本実験でドーパミンD2受容体アゴニストが不正確なTh17応答によって誘導される病気に対する有効性を、ラットの歯周病モデルを用いて解析する。1. ラットの歯周病モデルにおいて、CD4+ヘルパーT細胞が集結しており、Th17応答を誘導していることを解析する。2. 蛍光抗体を用いた蛍光顕微鏡による解析により、ドーパミンD2受容体アゴニストの塗布が1.におけるTh17応答を抑制することを明らかにする。3. ドーパミンD2受容体のアゴニストの塗布により、1.における歯周病の病態を優位に改善することを解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ドーパミンD2様受容体シグナルによる抗原提示細胞の機能調節機構の解析において、マウス未熟CD4+T細胞およびマウス混合リンパ球反応にドーパミンD2受容体アゴニストを作用させた後にTh2およびTh17の分化を誘導しドーパミンD2受容体アゴニストがTh17の分化を抑制させ、さらに分化の抑制がドーパミンD2受容体シグナル伝達の阻害剤で解除させることを解析したがこの解除を促す阻害剤の検討に時間を要したため研究の進捗に遅れを生じる事となった。 それに伴い研究費についても次年度使用が生じたが、阻害剤についてはおおよそ絞り込む事が出来たので当初予定していた研究の(マウス未熟CD4+T細胞の分離を始めとする)細胞誘導に関わる試薬の購入、さらにその評価に関わるELISA Kit等に研究費の使用を計画している。次年度は予定通りの執行を予定している。
|