研究課題/領域番号 |
21K09932
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
川瀬 知之 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90191999)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血小板 / 多血小板血漿 / ポリリン酸 / 組織再生 |
研究実績の概要 |
1)polyPの細胞学的・定量的検出法の確立: どちらも蛍光色素DAPIを使用した技術であり,前年度に概ね確立していたプロトコールをさらにさまざまなサンプルを対象として,その再現性・信頼性・有用性を検討した.また,あらたにハイスループットなアッセイに耐えることを目的として,蛍光プレートリーダーを導入した.従来の石英キュベットを用いた蛍光光度計とは,光路,プレートの反射,血小板による吸収等において大きな相違があり,そのままではデータの一致が難しいことが判明したが,血小板懸濁液の濃度を1/5以下にすること,超音波処理することにより改善が図られた. 2)コロナワクチン接種が血小板polyP量に及ぼす影響: コロナワクチンの副反応として過剰な免疫反応や微小血栓の形成と血小板減少症が報告されていることから,ファイザー社mRNAワクチンの血小板polyP量への影響を検討した.女性において,副反応の発生とpolyP量の低下に相関が認められた. 3)プロアスリートの血小板polyP量: 毎日計画的な身体トレーニングを欠かさないJリーグのサッカー選手の協力を得て,同年代の一般健康人を比較した.予想に反して,骨格筋のエネルギー代謝が高いアスリートの血小板polyPは一般人より有意に低いという結果であった.この結果から,ATPとpolyPとの間にある種の平衡関係があることが示唆された. 4)培養細胞中のpolyP局在の解明: 血小板と白血球や間葉系幹細胞との間に,エクソゾームを介した細胞間情報伝達システムが存在する可能性が示唆されていることから,それを可視化する技術の確立を目指している.同じくDAPIに親和性がある細胞表面のプロテオグリカンやヘパリンなどと識別する方法はほぼ確立した.また,エクソゾームについて,基礎的な分離回収技術として凍結乾燥法の有用性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1) 基礎的な技術開発やプロトコールの確立を終えて,コロナワクチンの影響やアスリートの血小板エネルギー代謝との関係からpolyPの生理的・病理的役割にまで研究の幅を広げられた意義は大きい. 2) また,血小板からpolyPが放出される過程においてエクソゾームを介しているかどうかを明らかにするという研究計画に先立って,エクソゾームの効率的な回収法についても検討し,凍結乾燥法の有用性を明らかにした.この技術開発によって,エクソゾームの関与についての研究も大いに進展するものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
蛍光プレートリーダーによるハイスループットアッセイのプロトコールを確立し,正確性や再現性で,多数のサンプル処理に耐えられることを検証する.新年度に入って,早々に画像解析ソフトを入手したので,これを活用して有核の培養細胞中のpolyPの局在について,技術的確立も含めて検討を進める. polyPはPiの供給源として骨形成,とくに石灰化を促進するといわれる.これまでの細胞化学的研究から,培養骨芽細胞中におけるリン酸カルシウムの沈着とpolyPの局在が重なる傾向がみられた.この現象について,石灰化の指示薬であるカルセインやATP合成抑制剤あるいはpolyP分解酵素であり石灰化酵素であるアルカリホスファターゼの試薬を用いて,詳細に検討する. また,エクソゾーム中にpolyPが含まれるかどうか,これまでに確立した技術を動員して検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで使用してきた汎用の画像解析用ソフトがパソコンの更新に伴って使用できないことが判明した.バージョンアップのための予算が必要となったが,会計検査を控えた年度末ということもあり,次年度に使用することとして繰り越した.なお,当該ソフトは新年度の開始とともに発注し入手した.
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