研究課題/領域番号 |
21K09932
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
川瀬 知之 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90191999)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 血小板 / 多血小板血漿 / ポリリン酸 / 組織再生 / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
1) polyP測定用血小板保存に関する検討: できるだけ再現性高くpolyPを測定するには,研究の効率化と操作バイアスを極力排除する基本的な技術が求められる.血小板を一晩固定し冷蔵保存後,水洗してから-80℃で凍結保存する方法を創出した.この有用性を検証した結果,少なくとも6週間は安定して保存できることを確認した. 2) プロサッカー選手の血小板エネルギー代謝と体組成の相関性に関する検討: 事前の作業仮説ではプロサッカー選手の血小板は高いATPレベルを含んでいるものと想定していた.しかし,実際は,polyP同様に低いATPレベルを示した.プロサッカー選手の血小板は,高いエネルギー代謝活性を示している可能性が示唆された. 3) PRP中の増殖因子レベルに関する検討: サンプルの対象を男性プロサッカー選手から女性大学生アスリートに広げて,PRP中に含まれる炎症性および抗炎症性サイトカインのレベルを非運動系対照群と比較した.女性アスリートはIL-1βとIL-1 receptor antagonistがともに有意に高い値を示した. 4) アスリートの性差に関する検討: 上記の炎症性・抗炎症性サイトカインの所見について,男性プロサッカー選手と女性大学生アスリートの間で比較検討した.女性アスリートはPDGFやTGFβなどの増殖因子が有意に低レベルだったのに対して,抗炎症性サイトカインが高いレベルを示した.女性アスリートは炎症を制御して増殖因子等による組織再生を促している可能性が示唆された. 5) polyP徐放性担体に関する検討: 半減期が短いpolyPの欠点を補う基材として,血漿分画を加熱することでジェル化した基材の有用性を検討した.初期の放出が大きいという欠点があるものの,24時間以降は緩徐な放出を継続したことから,今後の改良により実用化の可能性があると認めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一昨年度の年末に新型コロナ感染により入院加療したため,研究計画が全体に遅れたが,さらに得年度のGW前後に急性副鼻腔炎を患い1か月ほど自宅加療が続いた.その結果,予定していたサンプルの処理ができなくなり,例数に若干の不足をきたした.また,日程的に研究遂行が全体的に遅延する結果となった.
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今後の研究の推進方策 |
計画全体に変更はなく,その後現在に至るまで,予定の遅れを取り返すべく,鋭意研究遂行に務めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
全体に研究の進行に遅れが生じたため,主にオープンアクセスジャーナルに発表するために取り置いていた予算を繰り越す結果となったためであり,今年度の論文発表に際してArticle processing chargeとして使用する予定である.
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