骨組成は炭酸基を7~9重量%含む炭酸アパタイトである。炭酸アパタイト骨補填材は自家骨に匹敵する骨伝導性を示し、自家骨と同様に骨リモデリングに調和して新しい骨に置換されるため、理想的な骨補填材となる可能性が高いが、荷重領域に応用するには機械的強度に難点がある。炭酸アパタイトは前駆体を用いた溶解析出反応で調製されるため、適切な前駆体の選択、前駆体の修飾によって機械的強度に優れる炭酸アパタイト骨補填材が調製される可能性が高い。本研究は、石膏を前駆体とする炭酸アパタイト骨補填材の機械的強度を飛躍的に高める因子を検討することである。 当該年度は昨年度から継続している細胞実験方法を再考、改良し、新たな実験方法で石膏硬化時に加えた圧力の差がRAW264.7細胞から破骨細胞への分化に与える影響を検討した。破骨細胞関連遺伝子の発現変化を定量化したところ、炭酸アパタイトプレート上でRAW264.7細胞の培養を行った場合は、細胞培養プレート上で培養を行った場合と比較して破骨細胞関連遺伝子の発現量は増加する傾向にあったが有意な差は認められなかった。また、加圧量の差による破骨細胞関連遺伝子の発現量に有意な差は認められなかった。 以上の結果から、本研究において確立した石膏を前駆体とし、硬化時に加圧することによって前駆体の機械的強度を上昇させる方法は、硬化体がより緻密になり、さらに硬化時の加圧量が増加するにつれてより緻密な硬化体となるが、加圧量の差による破骨細胞の分化には影響を及ぼさないことから、炭酸アパタイト上での破骨細胞の分化能を保ったまま、炭酸アパタイトの機械的強度を向上させることが可能である方法であることが判明した。
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