研究課題/領域番号 |
21K09948
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
大野 純 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (10152208)
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研究分担者 |
鍛治屋 浩 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (80177378)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オルガノイド / 歯周組織 / スフェロイド / 骨分化 / セメント質分化 / コラーゲン・ゲル培養法 / オートファジー |
研究実績の概要 |
テーマである極性を付与した歯周組織オルガノイドの開発に向けて、2021年度は①スフェロイドとコラーゲン・ゲル培養法の工夫と②オートファジーによる分化誘導の制御について検討した。①については、スフェロイド培養は間葉系幹細胞(MSC)の分化誘導を促進する方法として推奨されている。MSCスフェロイドは生体における3次元組織構築を再現するものであるが、実際に通常の2次元培養法と分化誘導に差異がないとの報告が散見される。さらに、歯周組織内に存在するMSC(歯根膜幹細胞、HPLSC)は、生体では歯根膜線維(コラーゲン線維)に埋入されて存在し、必要に応じて目的とする細胞に分化して、歯周組織の再生・修復に関与している。したがって、歯周組織オルガノイド形成においても、この模擬歯周組織環境下において生体と同様の分化誘導能を発揮するものと考える。そこで、HPLSCスフェロイドをコラーゲン・ゲルに培養して、セメント質分化への効果を検討した。その結果、コラーゲン・ゲル培養HPLSCスフェロイドは、2次元培養HPLSCおよびHPLSCスフェロイド単体と比較して、セメント質への分化誘導が著しく亢進していた。これらの結果は、歯周組織オルガノイドの培養環境には、模擬歯根膜としてのコラーゲン・ゲル培養法の応用が必要であることが明らかとなった。②については、オートファジーによるMSCの骨分化誘導への関与を、オートファジー促進あるいは抑制により検討している。その結果、現在までのところ、初期の骨分化誘導にはオートファジーの亢進が有用である可能性を示している。 2021年度の成果として、①については Int J Mol Sciに論文が掲載された。また、②については第29回硬組織再生生物学会学術大会・総会(学会賞受賞講演として)および第80回日本矯正歯科学会学術大会&第5回国際会議にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調和のとれた分化誘導を図るためにオルガノイドに適した培養法の検討を行った。具体的には、間葉系幹細胞スフェロイドとコラーゲン・ゲル培養のコンビネーションが、歯周組織を構成する細胞への分化を良好に誘導することが明らかとなった。また、このデータの一部をまとめたpaperがInt J Mol Sciに採択された。この知見は、歯周組織オルガノイド構築および歯周組織の分化誘導に重要なテクニックであると思われる。このテクニックを確立できたことは、今後の歯周組織オルガノイド開発に重要なポイントとなる。また、”分化の極性”についても、オートファジーを促進することにより、オルガノイド内で極性を有する分化細胞をコントロールできる可能性を示唆している。これらの研究進展は2022年度への重要な足掛かりとなるもので、2021年度はおおむね期待している成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には、歯周組織オルガノイドに適した環境を付与する培養法の確立とオートファジーによる分化制御への予備実験からのデータが得られた。今後は、実際に歯周組織オルガノイドの作製に取り掛かる。具体的には、薬剤あるいは遺伝子導入法を用いて歯根膜幹細胞(HPLSC)を歯槽骨、歯根膜(膜)およびセメント質(セ)へ分化させ、それぞれのスフェロイド(ス)を作製(HPLSC_骨_ス、HPLSC_膜_スおよびHPLSC_セ_スを準備)する。このスフェロイド形成時に、HPLSCのオートファジーを調節して、分化の極性付けを行う。極性が定まった各種スフェロイドをコラーゲン・ゲル培養を行い、歯周組織オルガノイドの形成を試みる。細胞の分化および極性などの判定は、ウェスタン・ブロティング法および細胞免疫染色法で検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ対策による研究時間短縮、他の研究費が流用できたため、次年度の研究が当初の計画よりも研究費が必要となったため。
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