人工骨に血管網を導入するために、まずは連通孔を持つ市販の骨補填材を使用して、三次元細胞培養を行った。市販されているネオボーン(ハイドロキシアパタイト(HAp))を使用し、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)が人工骨内で管腔構造を形成するために必要な条件を検討した。具体的には、血管内皮細胞増殖因子を含んだ増殖培地 (EGM2-MV)を使用し、HUVECを人工骨上で最長14日間培養した後に走査型電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、培養3日後に人工骨内部に細胞が付着している様子が観察され、培養14日後においても同様に細胞が接着していることが分かった。 続いて、人工骨内に細胞を三次元的に配置するために、人工骨にマトリゲルまたはゼラチンハイドロゲルを浸潤させた状態でHUVECを培養した。マトリゲルを使用した場合は細胞が人工骨内部まで侵入しなかったが、ゼラチンハイドロゲルを浸潤させた試料では人工骨内部において細胞が非接着状態で存在していることが分かった。 上記の検討では、培養期間を延長しても管腔構造の形成が観察できなかったため、本研究の再開後は血小板由来成長因子や線維芽細胞増殖因子を併用することで管腔形成を促す予定である。さらに、生体非吸収性材料であるHApと、生体内で吸収・骨置換される性質をもつβリン酸三カルシウム(β-TCP)を組み合わせることで、より早期の骨再生が可能であると考えられるため、HAp/β-TCP多孔性複合体の作製およびその物性評価も今後行っていく予定である。
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