研究課題/領域番号 |
21K09957
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
建部 二三 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (10534448)
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研究分担者 |
遠藤 一彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70168821)
根津 尚史 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (40264056)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | チタン / ラクトフェリン / 抗菌性 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、ラクトフェリン(LF)の抗菌作用に着目し、アバットメントに使用される材料表面に物理的にLFを結合し、インプラント周囲炎関連細菌に対し有意な付着抑制効果を示すこと、LFは材料表面上で殺菌性を示すことを示した。 本研究では、LFが鉄イオンに強くキレート結合する性質を応用する。アバットメント材料として使用される材料の表面にLFを直接結合するのではなく、鉄薄膜を形成することで間接的にLFを集積し、抗菌効果を発揮する材料を創製することを目的としている。唾液中には常にLFが存在することから、薄膜を形成する鉄イオンが確実にLFを呼び寄せ、強くキレート結合し、半永久的に抗菌作用を発現する表面が得られることを検証する。 薄膜形成法には様々な方法があり、成膜方式により鉄薄膜の物理的諸特性が異なる。本研究では、①LFとキレート結合させるために鉄イオンが薄膜を形成すること。②薄膜形成により表面粗さに変化がないこと。③耐食性が良いこと。④基質の(Ti,YSZ)の機械的性質を損なわないことなどが求められる。 アバットメント部に頻用されるTi、YSZの表面にイオンプレーティング法並びにスピンコート法で数十~数百nmの鉄薄膜を形成し、その表面の機械的性質、物理的性質、化学的性質を明確にすることとした。今後、鉄薄膜形成試料のLF吸着・脱着挙動の評価、生体親和性、抗菌性の評価を行う予定である。令和3年度では鉄薄膜形成方法について検討を重ね、同時に基材となるTi表面、YSZ表面の機械的性質、耐食性の評価やLF吸着について調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
適切な鉄薄膜の形成方法の選択に時間を要して研究に遅れが生じているが、次年度からは順調に進行する見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
鉄薄膜形成Ti、YSZの機械的性質、耐食性の評価、LF吸着能、生体親和性、抗菌性の評価を行い、長期耐久性の検討も開始する。 鉄薄膜形成Ti、YSZの物性評価は、硬さ測定試験や耐摩耗試験を行う。摩耗試験前後で表面粗さ、色調の変化を測定する。 耐食性は、異なるpHの人工唾液中に試料を浸漬し、各種溶出量を測定し、表面粗さの測定、色調の変化の測定を行う。このとき、長期浸漬も行い、長期耐久性も調べる。 LF吸着能は、水晶発振子マイクロバランス(QCM)を用いて、鉄薄膜形成TiもしくはYSZ表面のLF吸着・脱着挙動、吸着・脱着量を評価する。 生体親和性は歯肉線維芽細胞を用いて細胞増殖試験にて評価し、抗菌性は歯周病ならびにインプラント周囲炎関連細菌を用いて鉄薄膜形成Ti上で細菌を一定時間培養し、LIVE/DEAD染色後、共焦点レーザー顕微鏡観察し生死の判定や付着量の評価を行う。また、SEMで細菌の形態を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に研究に遅れが生じてしまったため。次年度以降、遅れを取り戻せる見通しが立っている。
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