研究実績の概要 |
フッ素化合物は、常温で安定した粉末状を呈する二フッ化水素アンモニウム(NH4HF2)およびフッ化水素カリウム(KHF2)を選択した。ジルコニア陶材は3mol%イットリア部分安定化ジルコニア(3Y-TZP)および光透過性のある6mol%イットリア部分安定化ジルコニア(6Y-PSZ)を選択した。選択した焼付用陶材は、3Y-TZP、6Y-PSZともに同一の材料を使用した。エッチング処理条件は、ジルコニア円形試料上にフッ素化合物粉末(100 mg)を載せ、各粉末材料の融点を考慮し、NH4HF2では170℃、KHF2では280℃に加温し処理を行った。エッチング処理後、蒸気洗浄機を用いて15秒清掃を行い試料とした。 ジルコニアへの焼付強度の評価: エッチング処理後のジルコニア表面に前装用歯冠色陶材を焼付け、各種ジルコニアに対して接着強度の測定(せん断接着試験)および熱衝撃による接着耐久試験(5-55℃,20,000回)を行った。なおせん断接着力をジルコニアへの焼付強度とした。その結果、未処理では3Y-TZPでは 2.2 MPa、6Y-PSZでは 1.7 MPaのせん断強さを示した。エッチング処理後では3Y-TZPへのKHF2処理 14.3 MPa、6Y-PSZへのKHF2処理 12.6 MPa,3Y-TZPへのNH4HF2処理 12.6 MPa、6Y-PSZへのNH4HF2処理 9.2 MPaを示し、未処理と比してエッチング処理が有意に高いせん断接着強さを示した。このことからジルコニア表面へのフッ素化合物によるエッチング処理が、陶材焼付強度を増加させることが明らかとなった。 多層構造ジルコニアの表面分析および観察:X線回折法および電界放出形走査電子顕微鏡を使用し、強拡大にてエッチング処理のジルコニア結晶構造への影響を観察した。
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