研究課題/領域番号 |
21K09972
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥山 弥生 東北大学, 大学病院, 助教 (30223697)
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研究分担者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
熊澤 逸夫 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70186469)
勝田 悠介 東北大学, 大学病院, 助教 (70781277)
山田 将博 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (90549982)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 支台歯形成 / 技能評価 / 人工知能 / 機械学習 / ニューラルネットワーク解析 / ルーブリック |
研究実績の概要 |
近年,デジタルデンティストリーの開発は目覚ましいものがあるが,補綴治療において,口腔内で長期に安定した治療効果を得るためには,適切な支台歯形態を与える必要がある.しかし,支台歯形態の良否の臨床的判断は,いまだ主観的な目視に依存している. 研究代表者はこれまでに「支台歯形態評価ルーブリック」を開発してきたが,これは手動の過程を多く残しており,評価者に技能評価の多くを委ねているのが現状である.研究代表者らは,三次元形状デジタルデータの人工歯を対象に,教員によるルーブリックを用いた支台歯形態評価を教師とした機械学習を行い,種々の条件下で解析を重ね,高正解率の支台歯形成評価の最適解析方法を求めてきた. 本年度,研究協力者であり,令和3年度生体医歯工学共同研究拠点プロジェクト研究課題の協同研究者である吉岡勇人准教授の指導の下,人工支台歯の三次元形状データから,咬合面の削除量および軸面のテーパー角度を算出する方法の解析が進められ,それぞれの自動評価システムを開発した.すなわち,支台歯形成済人工歯上に作成した断面の外形線を歯根側から順に走査し,偏角の変化率が小さい範囲を抽出するという幾何学的手法によって「軸面のテーパー部分」を抽出することに成功した.「軸面のテーパー」の評価アルゴリズムの確立は,本研究の根幹的課題の解決に相当するものと思われる.また,「咬合面の削除量」の評価を立体的な3Dデータ全体を評価対象とし,支台歯の形状特性を考慮し,小窩付近では立体的な抽出範囲を設定し,その範囲内での最短距離を算出する方法を確立した.その結果,より精度の高い評価結果を得ることができた. 今後は,形成済人工歯の3次元データの次元数をそのまま解析対象とする最適解析方法を複数の評価項目に関して求め,次にその測定データをどう評価するか,歯科指導者による具体的な検討を開始する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基本となる高精度3Dデータの解析方法について、今年度は支台歯形態の中で臨床的にも最も重要な構成部分である軸面のテーパーに着手することができた。 すなわち、支台歯形成済人工歯上に作成した断面の外形線を歯根側から順に走査し、偏角の変化率が小さい範囲を抽出するという幾何学的手法によって「軸面のテーパー部分」を抽出することに成功した。「軸面のテーパー」の評価アルゴリズムの確立は、本研究の根幹的課題の解決に相当するものだった。また、「咬合面の削除量」の評価を立体的な3Dデータ全体を評価対象とし、支台歯の形状特性を考慮し、小窩付近では立体的な抽出範囲を設定し、その範囲内での最短距離を算出する方法を確立した。その結果、より精度の高い評価結果を得ることができた。 以上の研究成果は非常に良くまとめられたが、年末近くになり得られたものであった。 研究代表者が開発したルーブリックには多くの評価項目があるが、今年度の解析結果より、3次元データそのものを対象とした詳細な項目に関しても評価を行うことができる可能性が示唆され、未着手の評価項目を見直し、効率の良い解析方法について研究分担者である熊澤逸夫教授の指導のもと、審議・検討を済ませ、次年度の準備を終えたところである。 人工知能の研究をすでに本国で済ませている留学生の日本入国が約半年遅れたが,到着後の研究への取り組む力は秀でており、本研究はやや遅れている程度で、着実に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,評価ルーブリックの評価項目ひとつひとつについて,形成済人工歯の3Dデータをそのまま,次元を減らすことなく解析対象として最適アルゴリズムを探索する予定である。これまでの解析手法に基づくと,いずれも断面を作成するなどしてデータの次元数を減らして解析を行なってきた。非常に高精度,高解像度,高速の測定環境の下で得たデータを最大限有効に解析することが重要である。本研究で使われているデータの保存形式はSTLデータであることから,この段階で若干の元データの減少は否定できない。以前は3次元データ全部を対象とすると,データ量が膨大になり,解析の効率は低下することが懸念された。しかしながら,必要項目を絞り込み,効率の良い手法を見極めた上で,取り組めば,データ量に関しては解決できるものと思われる。また高スペックのPCの利用によって,これらの難点は解決できることも確認済みである。 今後は以上のような過程を経て得られた解析結果をどのように評価するのか,どうクラス分けするのか、歯科専門側に課せられた研究の最大根幹テーマの解決に挑む予定である。 何より評価結果のoutputが学生の目にとって分かりやすく,わくわくするような視覚素材になることを意識した上で,解析を進め,評価結果の提示方法も見据えた研究を進める方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染禍の影響で、研究分担者の研究室へ留学予定の学生が、長期にわたり入国できず、本研究の開始が遅くなったため、実質上研究に係る経費が使用されなかった。 また、同じ理由でオンライン会議がほとんどだったため、予定していた旅費を使うことはなかった。一方で、さまざまな学会への参加が可能だったことから、多くの学会への参加費用が他の年度に比べて多くなった。 本格的な研究は次年度に向け組み立て直し、すでに研究計画のもと着手している。
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