研究課題/領域番号 |
21K09980
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中島 和慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (40707246)
|
研究分担者 |
佐々木 宗輝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10706336)
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
住田 吉慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (50456654)
黒嶋 伸一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (40443915)
澤瀬 隆 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (80253681)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 薬剤関連顎骨壊死 / BRONJ / インプラント周囲炎 / マクロファージ / ビスホスホネート製剤 / LPS |
研究実績の概要 |
歯科インプラントを用いた欠損補綴治療は予知性の高い優れた治療選択肢であるが,健康寿命の延伸に伴い一層の長期安定性が求められている.一方,インプラント周囲に惹起されるビスホスホネート製剤関連顎骨壊死とインプラント周囲炎は難治性の硬軟組織疾患であり,病因は不明で確定的な治療法はなく,臨床的に大きな問題となっている.一方,マクロファージ(MΦ)は炎症や創傷治癒に重要な役割を果たす免疫細胞のひとつで,近年では炎症性MΦ(M1MΦ),組織修復性MΦ(M2MΦ),ならびに骨性MΦ(Osteomacs)の存在と機能が解明されつつあるが,口腔内硬軟組織におけるこれらMΦの分布や機能は不明である.近年,研究代表者らは,細胞移植によりマウスBRONJが治癒・寛解し,組織内ではM2MΦとM1MΦの比率がM2へシフト(極性変化)することを突き止めた.本研究は,マクロファージの極性制御を基軸とし,難治性硬軟組織疾患であるインプラント周囲BRONJとインプラント周囲炎の病因解明と新規治療法開発に対する基盤を構築することを目的とした.本年度はラットを用い、ビスホスホネート製剤とステロイド製剤の併用投与にインプラント埋入を組み合わせた高頻度発現型ラットインプラント周囲BRONJモデルと,LPSで誘発したインプラント周囲炎モデルの開発に成功した。そして、インプラントBRONJ周囲の病態形成には、M1MΦとM2MΦの極性変化が重要な役割を果たす可能性を明らかにした。さらにインプラント周囲BRONJにおける組織病理学的・免疫病理学的解析から、インプラント周囲BRONJは天然歯周囲のBRONJと異なり、広範囲に拡大する可能性も示唆された。以上は複数の学会で報告され、論文化することができた。なお,インプラント周囲炎モデルについては現在解析を行っている段階である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、何よりもまずインプラント周囲に高頻度でBRONJを惹起するモデルとLPSで誘発させるインプラント周囲炎モデルの構築が必要不可欠であったが、両者の開発に成功し、さらにインプラント周囲BRONJモデルに対しては,組織病理学的・免疫病理学的解析からMΦの関与の可能性も明らかにしているため、総合的に鑑みて、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の計画は,以下の通りである. 1.インプラント周囲BRONJモデルとインプラント周囲炎モデルへのMΦ移植実験と解析:細胞移植を行った我々の報告から,投与MΦ数は1匹あたり1×106個とする.通法に従いラット骨髄細胞をM-CSF,LPS,IFN-γで処理,またはM-CSF,IL-4,IL-10で処理し,それぞれM1とM2 MΦを得る.得られたMΦはイメージングフローサイトメーターとRT-qPCRで極性を確認する.MΦは生理食塩水に懸濁し,病態形成前または後にインプラント付近頬粘膜に1回局所注射移植する.その2週間後に屠殺を行って上顎を採取し,詳細な解析を行う.培養上清を濃縮した液性因子のみの移植群も作製後,詳細に解析する. 2.治癒候補分子移植・阻害実験:2つの異なる難治性疾患モデルから得られた情報を統合して治癒や病態形成に関わる分子の同定に挑戦し,各疾患の病因や治療法開発の基盤を構築し,論文化を目指す.①作製した各疾患モデル,M1MΦ移植による疾患悪化モデル,M2MΦ移植による疾患治癒モデルに対するマイクロアレイデータと各種解析結果データから得られた情報を統合し,治癒や病態形成に関わる可能性が高い候補分子2つを選択する.②候補分子とその阻害薬を入手し(合成は困難のため,存在しない場合は類似物質を入手),それぞれの疾患モデル作製前と作製後にインプラント周囲組織に局所投与する. (1)モデル作製前に候補分子またはその阻害薬を投与し,病態形成が抑制または促進されれば,病因・病態形成に関与する分子が同定できたと判断する.(2)モデル作製後より候補分子またはその阻害薬を投与し,病巣が治癒または悪化すれば,治癒に関与する分子が同定できたと判断する.
|