研究課題/領域番号 |
21K09985
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
佐藤 裕二 昭和大学, 歯学部, 教授 (70187251)
|
研究分担者 |
桑澤 実希 昭和大学, 歯学部, 講師 (10343500)
古屋 純一 昭和大学, 歯学部, 准教授 (10419715)
大澤 淡紅子 (奥山淡紅子) 昭和大学, 歯学部, 助教 (90585788)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | オーラルフレイル / 口腔機能低下症 / 要介護 / 口腔機能 |
研究実績の概要 |
高齢者では、口腔機能低下が疾患だけでなく加齢変化によっても生じ、フレイルと同様にオーラルフレイルと呼ばれる脆弱な状態に陥りやすい。オーラルフレイルの状態になると、食品摂取多様性の低下など栄養面に問題が生じやすく、社会性や身体機能の低下と相まって,口腔機能低下が低栄養,フレイル,要介護リスクの原因となりうる。そのため高齢者の口腔機能低下の管理は重要である。そこで本年度は,まず口腔機能に焦点を当てて横断調査を行った. 対象は,メインテナンスのために通院中で口腔機能低下症の検査を初めて受けた外来通院患者134名(男性53名,女性81名,平均年齢75.2±11.2歳)とした.患者基本情報,口腔機能低下症の該当の有無,口腔機能低下症の各検査項目,口腔機能低下症の該当率,各検査項目の陽性該当率,口腔機能低下症の診断に関連する要因について分析した. その結果,本研究の対象者134名中,63%が口腔機能低下症と診断され,年齢が上昇するに従って該当率は有意に高くなった.また各検査によって陽性該当率は有意なばらつきを認め,口腔機能低下症の診断には,口腔衛生不良と嚥下機能低下は関連を認めなかった.また,口腔衛生,口腔乾燥以外の検査で,口腔機能と年齢との間に負の関係を認め,咬合力と咀嚼機能にでは,性別が独立して有意な関連を認めた. 本研究の所見から,性別に関係なく高齢になるほど口腔機能は低下し,口腔機能低下症の各検査項目の基準値や検査項目の選択の再検討が必要である可能性が示唆された.また,口腔衛生と口腔乾燥のような口腔環境以外の検査項目では、口腔機能と加齢との間に負の関係があること,筋力が影響しやすい咬合力や咀嚼機能については性別も考慮する必要性が明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,COVID-19の蔓延による影響がまだ国内で排除しきれず,訪問診療での施設調査などが行いにくい状況にあったため,研究代表者が所属する施設でのみ調査を行った.高齢者の口腔機能に焦点を当てた横断調査の結果,口腔機能低下症の診断基準の問題を明らかにすることができ,また,縦断調査の内容についても一部,論文として発表することができた.そのため,本研究は当初の計画とは異なる部分もあるが,おおむね順調に進展しているとした.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度については,COVID-19の蔓延による影響を鑑みながら,可能な範囲で調査対象の拡大を検討している.実際に,訪問診療下での調査が困難な場合には,研究代表者が所属する施設における横断調査と縦断調査を行い,口腔機能と栄養(食事)との関連について模索する予定である.また,体組成分析や栄養に関する知見に関しては,研究代表者が所属する施設の内科医師に協力を依頼し,研究の遂行に関する助言を受ける予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,研究の遂行のために体組成分析に必要な機器を購入したが,COVID-19蔓延の影響があり,旅費やその他の消耗品を使用する頻度が減少し,次年度使用額が生じた.次年度については,COVID-19の感染状況を鑑みながら,調査に必要な消耗品の購入,研究発表に必要な費用に使用する予定である.
|