短縮歯列(SDA)コンセプトについては、口腔関連QOL・口腔機能を含む多面的な分析がなされ、臨床的・患者報告・経済的アウトカムの面で、"wait-and-see"アプローチには一定のアドバンテージがあるとされ、本邦では第二大臼歯に限局した欠損は補綴介入対象にならない可能性が示唆されている。本研究は、固定性インプラント補綴治療介入を行うSDA患者を対象に調査を行い、治療範囲と治療効果との関連を明らかにすること、治療介入を行うSDA患者と無治療のまま経過観察を行うSDA患者とで比較を行い治療介入に対する決定要因を明らかにすることを目的とした。 被験者に対し補綴治療介入前および介入後におけるデータ収集を実施した。片側の第二大臼歯、もしくは第一大臼歯・第二大臼歯の欠損(中間欠損でない)を有する者のうち、最終補綴として固定性インプラントを希望する患者に対し、患者立脚型アウトカムとして、口腔関連QOL指標のOral Health Impact Profile(OHIP)、客観的咀嚼機能評価として、グミゼリーを用いた直接的な咀嚼能力評価、デンタルプレスケールII・バイトフォースアナライザによる間接的な咬合力評価を行った。さらに、経過観察を希望する・もしくは既に経過観察を行っている患者に対する評価を実施した。 その結果、固定性インプラントによる治療介入後に全ての調査項目は介入前より有意に改善していた。一方で、大臼歯2歯欠損の患者40名において、1歯補綴群、2歯補綴群で比較した結果、二群間には有意な差は認めなかった。また、介入群と無治療群を比較した結果、ベースラインでのOHIPスコアや客観的評価の結果には差は認めなかった。ロジスティック回帰分析にて介入群における治療決定要因を探索したところ、性別(女性)、OHIP口腔機能が低いこと、OHIP心理社会的要因が高いことに有意な関連が認められた。
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