研究課題/領域番号 |
21K09988
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
李 淳 日本大学, 歯学部, 講師 (10386055)
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研究分担者 |
大原 絹代 日本大学, 歯学部, 専修医 (10731606)
岡田 真治 日本大学, 歯学部, 専修医 (60844008)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 口腔乾燥 / 唾液 / 疼痛 / 感覚異常 / 三叉神経 |
研究実績の概要 |
口腔乾燥症が認められる患者では、口腔粘膜の疼痛閾値の低下や慢性的な感覚異常を訴えるものが少なくない。このような患者に対して義歯等の補綴治療を行う場合、単純に疼痛部位の避圧処置だけで良好な疼痛管理を行うことは困難であり、義歯治療に苦慮する場合が多い。口腔乾燥は口腔粘膜の疼痛や掻痒感・刺激感を引き起こすことも知られているが、その詳細については未だ不明な点が多い。そこで本研究では、口腔乾燥発症時の口腔粘膜における感覚異常発症機構を解明する目的で、唾液腺を摘出した唾液腺摘出モデルラットを作製し、行動学的手法を用いて研究を行った。モデルラットの作製は、Isoflurane 吸入麻酔下で、大唾液腺である耳下腺・顎下腺・舌下腺を両側切除し、1週間の回復期間を経て、行動薬理学的実験を行った。。 飲水量測定の結果、14日間の飲水量を体重100gに換算したところ、唾液腺切除群ではSham群と比較して有意に飲水量の増加が認められた。体重の測定では、体重の20%の飲水量供給を30日間行っても、唾液腺切除群、Sham群ともに体重増加率に有意な差は認められなかった。口腔内湿潤度を涙液量検査用フェノールレッド糸によって測定したところ、唾液腺切除群ではSham群と比較して湿潤度の有意な低下が認められた。口腔粘膜の感覚異常および疼痛の発現状態を観察するために、下顎左側門歯歯頚部から約3㎜下方の粘膜部にデジタルフォンフレイによって機械的刺激を、熱刺激プローブによって熱刺激をそれぞれ与え、逃避閾値反射を測定したところ、機械的刺激、熱刺激ともに唾液腺切除群はSham群と比較して有意な逃避閾値の低下を示した。 これらの結果から、唾液腺切除による口腔内の乾燥によって、飲水量の増加が認められ、口腔粘膜部の乾燥によって感覚異常や疼痛閾値の低下が発現する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、唾液腺切除モデルラットの口腔粘膜部に機械的削合による潰瘍を形成し、潰瘍周囲の疼痛閾値を測定する予定であった。しかし、疼痛が複数の条件によって発現する可能性を考慮して、口腔乾燥のみによって口腔粘膜部の疼痛閾値の低下が発現するか否かについての検討を行った。行動学的検討の段階から変更が必要となり、時間を割いているため、当初の計画よりも遅延が生じている。次の段階である免疫組織学的検討と解析にも遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
行動学的検討から、データの傾向を分析することができたため、今後の検討項目が明確となったと考えられる。 実験方法は確立されていることから、免疫組織学的検討を実施しながら、行動解析とともに並行して進めていく予定である。 免疫組織学的検討は、刺激部粘膜に生じる活性酸素種の発現、三叉神経節におけるTRPA1、TRPV1の発現解析を免疫組織学的手法を用いて行い、活性酸素種とTRPチャンネルの関連性について検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)令和3年度の実験計画の進行状況がやや遅れており、本来進める実験項目の変更や、購入予定であった抗体および実験器具などをまだ購入していないため。また、実験計画の進行状況の遅れとコロナ禍による影響により、本年度参加する予定であった学会で発表する機会が延期になってしまったため。
(使用計画) 実験計画の進行がやや遅れているために、本来購入する予定であった抗体および実験器具等の消耗品費に充当し実験を進めていく予定である。また、データ収集および解析の遅延およびコロナ禍による影響で、学会での発表が令和4年度以降に延期になってしまったため、令和4年度に報告を行えるように令和4年度助成金とあわせて旅費および学会参加費としても使用する。データ採取および解析を行うために適正な使用を行いたいと考えている。
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