研究課題/領域番号 |
21K09991
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
上田 康夫 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (30241342)
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研究分担者 |
山口 泰彦 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (90200617)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ジルコニア / 光造形 / セラミック / 3Dプリント |
研究実績の概要 |
令和4年度(2年目)は,CADソフトをBlenderに変更した上で,脱脂・焼成の確認用サンプルの設計を進めた.初年度(令和3年度)は,試削片を外注せずに小型の液相光重合式3Dプリンターで自作することにしたため,主にレジンとジルコニア粉末の混合比率の検証に注力したが,今年度は,ロストワックス鋳造用の光造形樹脂が幾つか入手できるようになったため,レジンを焼却性が良いと思われる鋳造用の樹脂に交換して,確認用サンプルを試作し,各種温度における焼却性の試験を行なった.具体的には,レジン4種類(Dongguan Godsaid Technology社製「C01」,山八歯材工業株式会社製「TrinDy」,Shenzhen Nova3D Robot Technology社製「Red Wax Like」,SHENZHEN CREALITY 3DTECHNOLOGY社「Jewelry Cast Resin」)を新たに導入し,その硬化特性を調べた他,粒径の異なる2種類のジルコニア粉末(東ソー社製「TZ-3YS-E」および「TZ-3Y-E」)をレジンとの混合比率1:1で混ぜて,混合状態,硬化状況,一部は試料体の成形が上手くいったものは焼却試験(焼却温度100, 200, 300, 400, 500℃)を行なった.まだ試験片の造形が安定せず,試料製作の歩留まりが非常に低いため十分な焼却実験には至っていないが,新たに導入した焼却用レジン単体の試料をのべ560個,ジルコニア粉末との混合試料を160個ほどを製作し,テストを行なった.それらの結果,レジン単体では,同じ紫外線照射時間に対してTrinDyが他のものよりも2倍以上の硬化厚さを呈することが分かった.ジルコニア粉末との混合試料では,400℃程度で概ね焼却が出来る事がわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では,ジルコニア粉末とレジンの混合材料を用いた3Dプリントによる成形体は外注により調達し,本研究では脱脂・焼結条件の最適化に的を絞った研究を行う想定であったが,3Dプリンターの低価格化と普及が進んだため,初年度途中からこれを利用して自前で成形(プリント)する手順に切り替えた.このため,導入した3Dプリンターに対する成形条件の最適化の検討も必要となり,その分だけ,まだ脱脂・焼結条件の検討に十分には至らず,遅れを生じている.しかし,この3Dプリントのための条件出しをクリア出来れば,当初掲げたように,「加工コストを抑えた製作法が開発できれば, 金属冠に代って生体親和性に優れたジルコニア冠を日常臨床で活用出来る」との夢に向けて,道がより開けていくものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までに行った実験の結果,一部レジンがガス化し始める付近での温度上昇を細かくコントロールして,急激なガス化による体積膨張で試料体に亀裂が入るのを防ぐ必要がある事がわかってきた.また,焼却用に新たに導入したレジンの特性の違いも分かったので,これらを元に,次年度には,別途用意してあるポーセレンファーネスを利用して,焼成のための温度をコントロールするプログラムを組んで検証していきたいと考えている. また,現状では,レジンとジルコニア粉末の混合比を1:1で行っているが,いまのところ混合方法については特に工夫をしていないため,粉末を液中で長時間均等に分散させた状態を保つことが出来ないことがわかっている.時間の経過と共に粉末が沈降してレジンと分離した状態に移行してくる.このため,混合比率を多少変えても,光照射が当たって硬化反応が起こっている底面付近では,想定とは異なり,常に一定の混合比率に留まっているのではないかとの推測が生じている.この点についても今後,検討を重ねていき,3Dプリント時の成形条件の最適化と,成形体の脱脂・焼結条件の最適化の両方を並行して検討していきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に近い時期に,新たな材料が1種類発売になる予定があり,ぜひこれを購入して比較試験を行ってみたいと考えていた.しかし,発売時期が少し延期になり,ちょうど決算時期と重なって年度内購入が危うくなったため,そのまま保留して次年度に持ち越しとしたため,次年度使用額が生じた.次年度に入った早い時点で,購入して実験を進める予定である.
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