研究課題/領域番号 |
21K09993
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小山 重人 東北大学, 大学病院, 准教授 (10225089)
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研究分担者 |
佐々木 啓一 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30178644)
古川 英光 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (50282827)
日原 大貴 東北大学, 歯学研究科, 助教 (60781292)
川上 勝 山形大学, 有機材料システムフロンティアセンター, 准教授 (70452117)
佐藤 奈央子 東北大学, 大学病院, 助教 (80510015)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 形状記憶ゲル / 顎顔面補綴 |
研究実績の概要 |
本研究では形状記憶ゲル材料(SMG)の歯科材料への応用探索を行い、口腔内における材料特性挙動や生体安定性を検証した。形状記憶ゲルは、アクリルアミドモノマーを主骨格とする、複数のモノマーにより架橋重合された3次元網目構造を有している。結晶融点の異なる2種類のアクリレートモノマー(ステアリル酸アクリレート(SA)およびラウリル酸アクリレート(LA))を含むことで、低温~室温環境下で形状を維持し、温度上昇に伴い生じる結晶融解によりヤング率が急激に低下する。これにより、重合体が瞬時に元の形状に戻る性質を示す(形状記憶・回復特性)。これらの特性を口腔内に適用するため以下の必要とされる材料特性評価を行った。1.圧縮変化による形状記憶・回復特性を検討するため、JIS K 6262を参考に圧縮永久歪試験を行った。結果、SMGは圧縮変形に対して、形状記憶・回復特性を示したが、異なるLA(SA)配合比率間で有意な差を示さなかった。形状固定後、37℃へ温度変化しても、50~60%の形状回復性を示した。今後、口腔内環境下での最適な材料設計を検討する必要があることが示唆された。2.生体内での安定性を検討するため、JIS T 6520 に準拠してSMGの吸水溶解性試験を行った。比較的、物性の高い配合においても、基準値の15倍以上の吸水量を示した。一方、溶解量は基準値以下であった。これは親水性の高いアクリルアミドモノマーが水分を含むためだと考えられる。アクリルアミドの配合量を低減するか、マトリックス重合率あるいは架橋密度の向上が必要であることが示唆された。3.新しい材料を配合することにより、特性が向上した。①CQ/3級アミンにより、37℃条件下での形状固定性が向上した。②MBAAの増量配合により、37℃条件下での形状回復性が向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況に関しては、おおむね順調に進展しているとした。 その理由としては、使用環境を想定した材料特性挙動および材料安定性評価がほぼ終了し、その問題点が抽出されたことによる。 これに対し、①3級アミン配合検討、②MBAA配合検討を行ったところ、口腔内を想定した37℃条件下での①形状固定性および②形状回復性が向上した。これより、次年度では、材料特性および配合を決定する目途がたった。
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今後の研究の推進方策 |
今後解決を図る課題としては、①口腔内温度下においてガラス転移してしまうため、口腔内で軟化・変形が生じる可能性があること、②補綴装置では,口腔内温度である程度の保持性と形状固定性が必要であるが、形状回復性・固定性が中途半端である可能性があること、③吸水性が高いため、装置の汚染・悪臭に繋がる可能性があること、があげられる。 次年度では、さらにSMGの配合を変化させ、①37℃付近の形状固定性を向上(形状回復性を低下)させる。②60℃付近の形状回復性は高い値で維持させる。③結晶軟化点を高温側にシフトさせることを目標とする。このため、①カンファーキノン/3級アミンによる2成分系光重合反応②MBAAの増量による架橋密度向上を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していた国内、海外出張が大幅に制限され、旅費が執行されなかったために次年度使用額が生じた。また、材料特性試験の検討が不十分であったため、計画を変更して、さらなる組成と物性の解析を行うことにしたため、次年度使用額が生じた。本年度は他の研究費バランスを考慮しながら、未使用額は新たな解析の経費とし、計画的かつ有効に執行する予定である。
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