研究課題
温度依存的に形状記憶・回復性を示す形状記憶ゲル(SMG)に着目し、歯科材料への応用を試みた。結晶融点の異なるアクリレートモノマー、アクリル酸ドコシル (DA) とアクリル酸ステアリル(SA)の比率を制御することでSMG を口腔内使用に最適化し、温度によるSMGの形状記憶、物性変化および生体適合性を評価した。方法は、DAとSAの混合比 0:100、25:75、50:50、75:25、100:0とした光硬化型SMG試験片に対し、中心部の厚みを測定した後60℃で軟化させ、圧縮永久歪試験器で硬化体を25% 圧縮し、圧縮形状を記憶させ、23℃、37℃および60℃にそれぞれ圧縮永久歪試験器を開放して、SMG硬化体の寸法変化を測定することにより圧縮永久歪試験を行った。結果は、全てのSMG配合条件において、23℃で100%の形状固定率を示した。37℃では、50:50、75: 25、100: 0において高い形状固定率を示した。SMGは60℃を超えると軟化して元の形状に戻った。60℃では、SAを配合において、低い形状固定性を示したことから、温熱下における急激なヤング率低下により形状回復性を示したと考える。100:0では、60℃の形状固定率が有意に高く、回復性に乏しかった。結晶融点の高いDAは、SMGの転移温度を高温側にシフトさせ、口腔内温度において安定した形状固定性を付与した。SMGは、相転移温度が高く、口腔内温度で義歯ベースのポリマー材料と同等のショアA硬度を示した。またSMGの水溶解度の低さから、生体安全性を示した。SMGに2 種のアクリレートモノマーの比率を制御して相転移温度を高めることにより、口腔内温度にて安定した形状固定性を有し、温熱下で容易に形状を変形するユニークな材料の開発に成功したことより、欠損形状の経時的変化に適応する補綴歯科材料への応用の可能性が示された。
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The Journal of Prosthetic Dentistry
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10.1016/j.prosdent.2024.01.016