研究実績の概要 |
歯数と循環器病発症との関連 都市部地域住民を対象とした吹田研究の参加者で,2005年4月から2010年8月までの間にアンケートの歯数を含む基本健診を行った3,196名(39~96歳,男性1,373名,女性1,823名,平均年齢65.9±11.0歳,平均追跡期間6.6±2.0年)を対象とした.残存歯数をアンケートにより評価し,20歯未満/以上の2群に分類した.対象者の循環器病発症(脳卒中と虚血性心疾患)について追跡し,追跡期間は2013年12月31日までとした.残存歯数と循環器病発症との関連を明らかにするために,残存歯数を説明変数,循環器病発症を目的変数,調整変数に血圧,総コレステロール,HDLコレステロール,空腹時血糖,BMI,喫煙・飲酒習慣,高血圧症・脂質異常症・糖尿病の有無を用い,Cox比例ハザードモデルによる多変量解析を行なった.次に,高血圧症の有無で二つのサブグループに分け,同様の解析を行なった(高血圧症:男性577名,女性641名,正常血圧:男性796名,女性1,182名).本研究における追跡人年は,21,206人年であった.全体の中で128名が循環器病を発症し,そのうち75名が脳卒中,53名が虚血性心疾患であった.多変量解析の結果,正常血圧の女性において,循環器病発症の危険因子で多変量調整を行った上でも,残存歯数と循環器病発症との間に有意な関連を認めた(ハザード比:3.83,95%信頼区間:1.18-12.42, P=0.025).一方,男性においては,いずれの解析においても,残存歯数と循環器病発症との間に有意な関連を認めなかった.本研究より,女性において残存歯数が少ないと,将来的な循環器病発症のリスクとなる可能性が示された.
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