研究課題/領域番号 |
21K10003
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
渡邉 恵 徳島大学, 病院, 講師 (40380050)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金属アレルギー / セマフォリン3A |
研究実績の概要 |
本研究では,歯科金属アレルギーの病態形成の中で,最初に金属が付着する皮膚や粘膜上でのセマフォリン3A(semaphorin 3A; Sema3A)を中心とした免疫反応に着目し,その発現を調節することで金属アレルギーの発症そのものを制御することを試みることを目的としている.本年度は,まず培養細胞を用いた実験で上皮角化細胞に発現するSema3Aを解析し,次に金属アレルギーモデルマウス耳介皮膚でのSema3Aの発現,および関連する免疫細胞の動態を検討した. 培養上皮角化細胞株(Pam2.12)をNiCl2溶液で刺激して発現するSema3A mRNAおよびタンパクを解析したところ,刺激後経時的にSema3A発現は上昇し,ウエスタンブロット法で確認した細胞内Sema3Aタンパクは,刺激12時間後で発現のピークに達した.Sema3Aは分泌型タンパクであることから培養上清をELISA法で測定すると,Niの刺激72時間後にSema3A量が増加することがわかった.免疫組織科学ではソフトウェア(BZ-X800 Analyzer)による定量解析を行い,刺激72時間後までのSema3A発現の増加を確認した.一方,siRNAで細胞内のSema3Aをノックダウンすると,Ni刺激後のTNF-α発現およびp38 MAPキナーゼの活性化が抑制された. そこで,これまでに構築した金属アレルギーモデルマウスにおけるアレルギー発症後の耳介皮膚を免疫組織化学およびウエスタンブロット法で解析したところ,アレルギー群で有意に強いSema3Aの発現を認めた.また,耳介皮膚に浸潤する細胞をフローサイトメトリーで解析すると,アレルギー発症耳介皮膚では,CD4陽性T細胞,M1マクロファージ,およびCD11C陽性樹状細胞の浸潤が亢進していることも明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,当初予定していたin vitro,in vivo実験をすべて終了し,Niの刺激によって発現するSema3Aの動態を詳細に解析できた.そこでさらに実験を進め,既にバッククロスまで完了しているK5-Creマウス,およびSema3A floxマウスを掛け合わせ,Cre/loxPシステムで上皮基底層のSema3A発現を欠失させたコンディショナルノックアウトマウスを作製した. 研究は順調で,当初の予定よりも早く進行している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度はK5-Creマウス,およびSema3A floxマウスによるコンディショナルノックアウトマウスを解析することを中心に研究を進める. Cre/loxPシステムで作製したコンディショナルノックアウトマウスでは上皮特異的にSema3Aが欠失しているため,このマウスに金属アレルギーを発症させて病態がどのように変化するのかを観察することで,金属アレルギー発症におけるSema3Aの役割を検討する.解析方法は,耳介腫脹反応,浸潤するT細胞を主体とした免疫細胞のフローサイトメトリー,発現するMAPキナーゼ等をウエスタンブロット等である. これらのin vivo実験と,培養細胞でSema3Aをノックアウトして金属で刺激するin vitro実験を併せてSema3Aのはたらきを詳細に解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用予定であったコンディショナルノックアウトマウス関連の費用が必要となったため前倒し請求を行ったが,PCRにかかる消耗品が予定より少額で賄えたため,次年度使用額が生じた.次年度は,マウスの飼育管理費やジェノタイピングに要する研究費と合わせて使用する計画である.
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