研究課題/領域番号 |
21K10004
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
柳口 嘉治郎 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (50264255)
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研究分担者 |
吉村 篤利 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (70253680)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コレステロール結晶 / 根尖病変 |
研究実績の概要 |
6週齢Wistar系雄性ラットに3種混合麻酔薬(メデトミジン0.375mg/kg、ミタゾラム2mg/kg、ブトルファノール2.5mg/kg)を腹腔内投与した後、ラバーダム防湿下にて先端の直径が0.5mmの滅菌済み歯科用切削器具を用いてマイクロスコープ観察下にて上顎第一臼歯を両側とも露髄・髄室開拡を行い、5根管とも根管口にて断髄を行った。近心根以外の4根の根管口は断髄後、コンポジットレジンにて封鎖を行い左右とも近心根の根管口のみ開放状態にした。両側とも近心根を作業長3.5mmで#35まで拡大したままの状態で2週間放置することにより、実験的根尖性歯周炎を惹起させることにした。露髄2週間経過後にマイクロCT撮影を行い実験的根尖性歯周炎の成立を確認した。その後、両側とも根管洗浄後、根管乾燥を行った後に、左側のみコレステロール結晶を注入、右側はそのままの状態でコンポジットレジンによる最終的な封鎖を行った。封鎖2週経過後にマイクロCTにて上顎第一臼歯を含む顎骨の撮影を行い、コレステロール結晶が根尖病変の成立に与える影響を検討した。露髄2週間後に撮影したCT画像からは両側ともに実験的根尖性歯周炎の惹起が確認できた。 その後、最終的にコンポジットレジンにて両側とも封鎖を行った1週間後に撮影したCT画像ではコレステロール結晶を注入しないで封鎖を行った右側第一臼歯近心根では根尖病変の大きさにほとんど変化はみられなかったが、コレステロール結晶を注入した後に封鎖を行った左側第一臼歯近心根では根尖病変の増大傾向が確認できた。難治症例の根尖病変にしばしば観察されるコレステロール結晶も異物として難治性に関与することが知られているが、本研究で用いたラットを使った動物実験モデルにおいてもコレステロール結晶が根尖病変の悪化を促す可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コレステロール結晶が根尖病変に成立に何らかの影響を及ぼすことは確認できたが、対照群との間に有意差がみられるほどのCT像がみられた標本は多くはなかった。また当初露髄期間は4週間に設定していたが歯槽骨の破壊が大きくコレステロール結晶の影響を確認することができなかった。このように露髄及びコレステロール埋入の最適な期間を決定するのに時間を要してしまったことが大きな要因と思われる。 またラット標本での脱灰動作及びパラフィン包埋が初めて行う内容だったため最適な脱灰期間で行うなど不慣れな術式が多く切片作製にかなり手間取っていることも進捗状況の遅れにつながったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で露髄及びコレステロール結晶埋入の最適な期間が確認できたため次年度はコレステロール結晶埋入1週間後にコンポジットレジンによる仮封を除去した後にβ―シクロデキストリンを根管貼薬剤として使用して同様にコンポジットレジンにて封鎖を行う。この際CT撮影を行いながら最適な貼薬期間を求めたのちに、画像解析結果から根尖病変の体積を算出し、βシクロデキストリン根管貼薬群と対照群とを比較し、ラット実験的根尖性歯周炎モデルにおけるβーシクロデキストリンの根管貼薬剤としての有用性の評価を行う。さらに連続切片を作製し、HA染色標本で根尖部の炎症像と骨吸収・添加の観察も行う。また抗ASC抗体を用いた免疫染色によりASCスペック形成数を測定し、βーシクロデキストリンのインフラマソーム活性化への影響を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた屠殺方法が変更したため購入予定だった器材及び薬剤の購入が見送られたことや標本作製が遅れたことにより染色に必要な高価な薬剤の購入がまだ行われていないことが大きな要因と考えられる。 次年度は露髄後の上顎臼歯の根管拡大時にハンドモーターの使用を考えているためこの購入費用に充てることを考えている。
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