研究分担者 |
小川 徹 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50372321)
福島 潤 東北大学, 工学研究科, 助教 (80634063)
洪 光 東北大学, 歯学研究科, 教授 (70363083)
滝沢 博胤 東北大学, 工学研究科, 教授 (90226960)
佐々木 啓一 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30178644)
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研究実績の概要 |
TiNコーティングは, 硬度, 耐摩耗性, 耐食性等に優れ, 審美的な金色を呈すること, さらに抗菌性や生体親和性も期待されるため, 歯科インプラントアバットメント表面の機能向上にも適していると考えられる. しかし, 従来の成膜法(PVD法, CVD法等)では, アバットメントのような複雑な立体構造体への応用は難しく, 成膜プロセス上の煩雑さ, 安全面やコスト面においても様々な問題が残されている. マイクロ波ドライプロセスTiNコーティング法は,圧力や雰囲気置換を行わない大気中においてTiN形成が可能という独自性を持ち, 安価で簡便なプロセスであり, アバットメントへの応用に適している. 本研究は, 硬度, 耐摩耗性, 耐食性, 審美性, 細胞動態および軟組織封鎖性という観点から, マイクロ波ドライプロセスTiNコーティング法のアバットメント表面における最適成膜条件の探索を行い, トランスレーショナルリサーチの展開へ向けての基盤を形成する. 今年度は, 市販のアバットメントへの応用を想定した試料の作製・材料学的評価を進めた. Ti6Al4円盤(直径5mm, 厚さ1mm)にマイクロ波ドライプロセスによるTiNコーティングを施した試料を作製した. 反応時間は10分とし, 800℃, 850℃, 900℃, 950℃, 1000℃の反応温度でコーティングを施した. SEM像では全ての反応温度において波模様の微細構造を認めた. XRD分析の結果からは, 反応温度が高いほど窒化が進行しており, 950℃, 1000℃でTiNを認めた. この結果, 市販のアバットメントへの成膜条件として, 上記の反応温度が妥当であることが確認された.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果によって, 市販のアバットメントへの応用を想定した試料の作製, 成膜条件の設定を進めることができた. 今後は成膜条件をさらに絞り, 表面粗さ(AFM), 硬さ(ナノインデンテーション解析), ぬれ性(液滴法)の評価を行う. また, 良好な結果を示す試料を抽出し, 耐摩耗性評価, 耐食性評価を行う予定である. さらに, 試料上でヒト歯肉線維芽細胞の培養を行い, 細胞接着, 細胞増殖, 細胞外基質産生能について評価を行う計画である. 次の段階として, 動物実験へと展開し, 本コーティングを施したアバットメント周囲の結合組織の評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は基材に用いるTi6Al4V円盤の作製に時間を要したため, 実験予定が遅れてしまった. 作製した試料の材料学的評価が今年度では終了しなかったため, 次年度使用額が生じた. 次年度は, 基材の作製, 培養実験細胞の購入, 細胞実験用器材の購入, 実験動物の購入, 動物実験用器材の購入に助成金を使用予定である.
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