研究課題/領域番号 |
21K10021
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安部倉 仁 広島大学, 病院(歯), 研究員 (30159454)
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研究分担者 |
西尾 文子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00881294)
森田 晃司 広島大学, 病院(歯), 助教 (30555149)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | PEEK / 研磨 / 臨床応用 / 大臼歯 |
研究実績の概要 |
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の歯科応用における利点は、生体安全性や生体適合性があり、曲げ強度が高く、粘り強く破断しにくいことで、対合歯への緩衝作用をも期待できることが挙げられる。新規補綴材料として期待されるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を大臼歯に用いた臨床研究を実施したところ、歯冠修復材料として期待値が高いことが判明した。しかし、耐摩耗性、研磨性、強度などに、いくつかの問題点も懸念されたため、今回さらに材料学的研究と臨床研究を行い、負荷が大きい最後臼歯部PEEKクラウンの応用について臨床的妥当性を評価することを目的とする。令和4年度は研磨実験を実施し学会発表を行い臨床研究を実施中である。 咬合面裂溝が付与されているようなPEEK表面の研磨は困難であるため、チェアサイドでの標準的な手順を呈示する必要がある。この目的を達成するため、研磨材の種類、粒子の大きさ、研磨用バーの結合材の性状、研磨用バフなどを変えた、種々の条件でPEEK試料を研磨し、表面粗さ、走査電顕像の解析などの評価を行う実験を行った。歯冠色PEEK材は既存の研磨材を用いて臨床的に適切な表面の滑沢さを得ることが可能であり,本研究においてはカーボランダムファイン、Sライム、マルチブルーの順に研磨を行うプロトコルが最も表面が滑沢にできることが明らかとなった。 破折リスクが高いと想定される最後臼歯部へのPEEK材のクラウンの応用についての臨床的評価を行うため、大臼歯PEEK冠を患者の口腔内に装着し、脱離、破折およびPEEK冠の咬合面に形成される咬耗や咬合小面などの臨床経過を検討する。令和4年度は広島大学病院臨床研究開発支援センターの支援を受け、特定臨床研究の計画、申請、利益相反関係の審査、臨床研究補償保険加入、厚生労働省へ申請、等の臨床研究開始前の手続きを完了し、臨床研究を順調に実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研磨実験については約20種類の研磨条件で研磨実験を行い、研磨表面の表面粗さ測定と表面性状の観察を実施することもすでに完了している。また、令和4年度の日本補綴歯科学会第131回学術大会のポスター発表へ行い、欧文の論文作成中である。 臨床研究は特定臨床研究であり、計画書作成から倫理委員会の審査、修正などの手続きには時間を要するが、現時点で既に完了し、実施許可も得られ、研究対象者を募集した。対象者の登録期間は令和4年度末までで、観察期間を含めた全臨床研究期間は令和5年度末である。当院では10症例を目標として、現在進行中で、R5年度内でには完了見込みである。1症例の治療には同意書取得後、約3か月程度を要すると考えており、残りの科研期間を考慮して、順調の進行状況と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研磨実験については公益社団法人日本補綴歯科学会第131回学術大会 2022年7月15日~17日において”歯冠色PEEK材の研磨方法の検討”と題したポスター発表を行った。さらにこの内容について英文誌上発表を行う準備を進めている。最後方大臼歯部へのPEEKクラウンの応用についての臨床研究は令和4年度中に広島大学病院で10名の研究対象者を募集、登録しながら最後方大臼歯PEEKクラウンによる治療を進め、本科研の最終年度にあたる令和5年度中に装着と6ヶ月間の観察を行い、臨床研究を終了する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
PEEKの接着性に関しての実験は令和4年度中に準備はできているが、5年度に実施予定であるため予算を残した。接着についての実験と、最後方大臼歯部PEEKクラウンの臨床の研究成果を学会発表し、研磨研究の成果を欧文雑誌に投稿する予定である。
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