研究課題/領域番号 |
21K10022
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
田島 登誉子 徳島大学, 病院, 診療支援医師 (80335801)
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研究分担者 |
細木 真紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (10228421)
松香 芳三 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (90243477)
大島 正充 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (00548307)
井上 美穂 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (20271059)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属アレルギー / microRNA / 扁平苔癬 / マイクロアレイ解析 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
口腔扁平苔癬は口腔粘膜に白色病変や糜爛・潰瘍を伴った紅斑性病変を形成することがあるが,歯科金属アレルギーで生じた口腔苔癬様病変を扁平苔癬と鑑別することは,肉眼的にも病理学的にも困難である.本研究では,本学歯科用金属アレルギー外来を金属アレルギーの疑いで受診した,口腔扁平苔癬の疑いのある患者を対象として, 歯科用金属パッチテストを行い, 経時的に末梢血microRNAの変化を測定して,金属アレルギーにより発現するmiRNAの種類や発現量を検討し,予知性の高い口腔扁平苔癬の診断法,すなわち歯科金属除去治療の有効性を高めるための診断基準の確立を目指している. 被検者は,口腔扁平苔癬と診断された当外来を受診した患者のうち,57~80歳の女性3名(以下患者群)と本研究の主旨を充分に理解した同年代の健常ボランティア1名(以下健常者)である.29種類の金属アレルゲンを使用して被験者の背中の皮膚に絆創膏を貼付し2日後に剥がした.皮膚反応は,ICDRG基準を用いて、絆創膏を貼付してから2,3,7日目に判定した.パッチテストと同時にパッチテスト前(0日目),パッチテスト3,7日目の血液を採取し, 血液サンプルは血漿分離し,血漿検体をmiRNAアレイチップ(3D-Gene,東レ,東京,日本)を用いて解析した. 患者群は1種類以上の金属に陽性または疑陽性反応を示した.患者群内で,0日目と3日目,0日目と7日目,3日目と7日目で比較し,発現比2倍以上でp値<0.05のmiRNAを発現変動した遺伝子として検討した結果,異なる時点間で,特定のmiRNAの発現に有意差があることが示された. また,健常者と患者群を比較したところ,0日目,3日目,7日目,それぞれに発現に有意差のあるmiRNAが認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
扁平苔癬あるいは扁平苔癬様病変は,金属アレルギー患者において比較的多く認められる症状だが,他の疾患を有さず,扁平苔癬あるいは扁平苔癬様病変のみという患者は非常に少ない.今回の患者群においても,パッチテスト結果がすべて陰性となった患者はいなかった.そのため,本研究の目的である扁平苔癬と扁平苔癬様病変の鑑別が出来ていない.また,年齢層が上がると,アレルギー疾患を含めた何らかの疾患を有する割合が高く,健常者候補を見つけることも容易ではない.被験者選定の困難さや症状の多様性が原因で、予定していた研究進捗にやや遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,さらに多くの被験者の獲得に努めることで,データの信頼性と統計的有意性を高めることを目指す.特に,年齢層が高い中で健常者候補を見つけることの困難さに対処するため,広範囲にわたる募集活動を強化する必要がある.さらに,金属アレルギーに特有なmiRNAの発現パターンを明らかにするため,患者群と健常者群との間で,パッチテストの時点(前,3日後,7日後)における血漿中miRNAの詳細な比較解析を続ける.患者群のパッチテスト結果とmiRNA発現量の違いについて詳細な解析を通じて,金属アレルギーの発症メカニズムや病態の理解を深め,これを基にした新たな診断方法や治療法の開発に寄与することを目指す.これらの成果は,学会での発表や,専門誌への論文投稿を通じて国内外に向けて発信する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)対象となる健常被験者の確保に時間がかかっており,そのため予定していたマイクロアレイ解析が完了せず,次年度使用額が生じた. (使用計画)不足している健常被験者の検査のため,検査試薬や絆創膏等の消耗品や,マイクロアレイ解析にかかる費用が必要になると予想される.また,研究成果を学会で発表したり,論文に投稿したりするために翌年度分の研究費と合わせて使用する予定である.
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