研究課題
本研究では、外部刺激としての赤外光に応答して「必要なタイミング」で「必要な量」の薬剤を放出可能な「インテリジェントDDSを目指した赤外応答性ハイドロゲルの開発」の開発を試みる。典型的な温度応答性ポリマーとは異なり、温度上昇によりゾルへの相転移を示す、Upper Critical Solution Temperature(UCST)型のポリマーを用いる事で、加温により内包した薬剤が放出されるシステムを構築する。このシステムを外部刺激により効率的に動作するため、赤外光照射に対して高い発熱応答を示すカーボンナノチューブと融合する事により、赤外光を照射した部分のみが速やかにゾルへと相転移を示し、薬剤を放出するを試みる。本課題の熱上昇により可塑化するUCST型温度応答性ポリマーの試作については、N-イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコールに架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド、更に物理的な架橋剤として12タングストリン酸を混合した水溶液を作成し、重合させることにより、目標としたゲルが得られた。得られたゲルは反応終了後には温度降下に伴い、白濁することが確認された。透過率測定により、ポリエチレングリコール含有量の増加に伴い相転移温度が低下するUCST型のゾル-ゲル転位応答を示すことが確認された。ゲル相転移温度を跨いだ温度変化を加える事により可逆的なゾル-ゲル相転移が観察された。 更に、薬剤モデル化合物として水溶性色素であるローダミンBを用い、熱応答に伴う薬剤徐放についての検討を行ったところ、過熱による薬剤モデルの放出が確認された。また、カーボンナノチューブ(CNT)をニトロベンゼン中へと分散し、コハク酸無水物を添加する表面化学処理により、水溶液への分散が可能となった。このCNT誘導体を上述で得られたゲルへと含有させたところ、赤外光照射による効率的なゾル-ゲル相転移を示した。
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