研究課題/領域番号 |
21K10026
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
三浦 賞子 明海大学, 歯学部, 准教授 (60431590)
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研究分担者 |
藤澤 政紀 明海大学, 歯学部, 教授 (00209040)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | additive manufacturing / 付加製造 / 3Dプリンタ / ジルコニア |
研究実績の概要 |
歯科医療におけるデジタル化の進展で,印象採得から切削加工法を応用した補綴装置製作までのデジタルワークフローが確立され,日常臨床において一般的となりつつある。付加造形法は,必要な材料を積層しながら製作されるため,切削加工と比較して被削材の無駄が少なく,近年注目されている技法である.我々はこれまでに付加造形法にて製作したジルコニアクラウンの表面粗さは,従来の切削加工法と比較して小さく,表面性状に優れていることを報告した.しかしながら,積層方向の違いがジルコニアの機械的性質に及ぼす影響については未だ明らかになっていない.本研究では,積層方向が機械的性質(曲げ強さ,曲げ弾性率,ビッカース硬さ,破壊靭性)に及ぼす影響について検討した. 試験片は,ジルコニアセラミックスペースト(3DMIX, ZrO2, Sinto3DCeram)を使用し,液槽光重合方式によるセラミックス3Dプリンター(Ceramaker C900, Sinto3DCeram)にて製作した.試験片のデータの配置は,積層方向に対して平行(0°),斜め(45°),垂直(90°)と設定し,それぞれの異なる積層方向にて製作された試験片について以下の試験を行った. 各試験の結果,曲げ強さでは,造形方向に対して垂直に積層した場合が,最も高い数値であったが,弾性率,ビッカース硬さおよび破壊靭性では,造形方向の違いによる測定値に大きな差はみられなかった.統計解析の結果,曲げ強さおよび弾性率では,測定値間において有意差が認められたが,ビッカース硬さおよび破壊靭性では有意差はみられなかった. 本実験結果より,付加造形にて製作されたジルコニアの機械的物性は,曲げ強さおよび曲げ弾性率で造形方向の影響を受けるものの,ビッカース硬さ破壊靭性には影響しないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までは基礎的実験として板状試料による機械的特性の評価であったが、今後は臨床応用に向けた臨床形態による造形方向の違いがクラウンの適合精度や破折強度に及ぼす影響について検討を行う予定である。クラウンの設計や造形方向の決定に時間を要したこと、また板状試料とは違って、臨床形態は造形後の後処理時間を要した。これらのことから試料製作に時間を要したため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
3方向(0°、45°、90°)の造形方向の違いによるクラウン形態の試料製作を行い、造形方向の違いが適合精度や破折強度に及ぼす影響について検討を行う。これらの結果から、クラウンの製作に最適な造形方向の探索を行う。クラウンの外径、内径および深さについて、3D点群データ評価用ソフトウエア(GOM Inspect, GOM)を用いて測定し、その寸法と設計値を比較する。造形する方向の違いが造形精度に及ぼす影響について明らかにする。また、実測値と設計値に差が生じる場合、その寸法変化の補償を行うようSTLデータについて拡大および縮小の編集を加えて再度製作し、その変化を補償するための最も良い条件を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はCOVID-19による影響で、計画通りの実験遂行が叶わなかったことや学術大会での成果発表は、オンライン開催などとなったため旅費の使用額が予定よりも少なくなったことが次年度使用額が生じた。しかしながら、成果発表のデータは上がってきているため、また規制も緩和されつつあるため学会発表などを積極的に行う。使用計画は、試料製作数を増加し、主に材料費として充当する予定である。
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