研究課題/領域番号 |
21K10031
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
横山 愛 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (70610252)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 機能回復 / 唾液分泌量 / 導管結紮 |
研究実績の概要 |
口腔乾燥感を訴える高齢者は少なくない。原因は様々であるが、その1つに唾液腺の加齢的変化がある。加齢変化としては、唾液を産生する腺房細胞が委縮することが知られている。げっ歯類を用いた実験において、唾液腺の排泄導管の結紮を行うとヒトの加齢現象と同様に萎縮した腺房細胞が観察される。更に、結紮を開放すると萎縮した腺房細胞は回復する事が報告されている。この現象に注目し、本研究では唾液腺排泄導管の結紮による唾液腺傷害モデルマウスを作製し腺房細胞を萎縮させ、結紮の開放後に回復する腺房細胞の遺伝子発現変化を検索することで、回復メカニズムの解明および萎縮した腺房細胞を回復させる因子を同定することを試みる。 初年度である本年度は研究計画調書に従い、遺伝子発現解析を行うためのサンプルの回収時期の検討を行った。回収時期の決定においては、形態的および機能的変化からの決定を計画している。機能的変化として、唾液分泌量の変化を検討することとなっていたため、まず唾液分泌量測定法の習得を行った。7週齢のC57/BL6マウスを購入し、深麻酔下でピロカルピン0.05mg/100g体重で腹腔内投与し、口腔内を歯科用の根幹内の乾燥に用いるペーパーポイントで拭い、#90以上のペーパーポイントを舌下部に置いて1分毎にペーパーポイントを取り換えながら、重量の測定を行った。続いて、マウスの片側耳下腺排泄導管結紮を行い、2週間後に結紮によりどの程度唾液分泌量が減少するのかを確認するために、結紮開放直後にピロカルピンを投与し唾液分泌量の測定を行った。予想に反して、導管結紮を行っていないマウスの唾液分泌量の方が導管結紮を行ったマウスよりも多いという結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で、初めてマウスを用いて唾液分泌量の検討を行った。指導を受けた唾液分泌量の測定法は、舌下部に歯科用の根幹乾燥に使用するペーパーポイントを置き、そこに唾液が吸収され、その重量を測定する方法であった。導管結紮2週間後に排泄導管結紮を行ったマウスと結紮を施していないコントロールのマウスの唾液分泌量を比較すると、コントロールマウスの唾液分泌量の方が少ないという結果を得た。本来であれば、導管結紮を行ったマウスの方が分泌量が減少するはずである。唾液腺の代償作用の可能性も考えられるが、正確に耳下腺からの唾液分泌量を検討するために、耳下腺の導管開口部と思われる部位である結紮側の臼歯部と頬粘膜の間にペーパポイントを挟んで測定を試みたり、頬粘膜に細く切った濾紙をあてて唾液分泌量の測定を試みた。しかし、ピロカルピンが効いてくると口腔内の水分が増加し、舌も濡れてくるためペーパーポイントや濾紙に耳下腺からの唾液以外の水分が触れてしまい、マウスの口腔内で耳下腺開口部から正確に唾液分泌量を測定することは非常に困難であった。 本年度は研究計画調書の予定では、遺伝子解析を行うためのサンプルの回収時期を決定するのが目標であったが、機能的指標として用いることを予定していた唾液分泌量の測定が、考えられる手法をいくつか試してみたが大変難しく、それが達成できなかったので遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
提出した研究計画調書に従って、引き続き研究を進めていく予定である。本講座の唾液腺研究において多くの実績を持つ吉垣純子教授に唾液分泌量について、マウスの小さな口腔内で舌下腺および顎下腺の唾液分泌量ではなく、耳下腺の唾液分泌量を測定することの限界について相談したところ、機能的指標としての唾液分泌量の代替指標として、耳下腺から分泌されるアミラーゼの量を検討してみたらどうかとアドバイスを頂き、機能的指標としてはアミラーゼで今後検討していくことを予定している。吉垣教授は、ラットのアミラーゼは耳下腺、舌下腺、顎下腺の3大唾液腺のうち、耳下腺からしか検出できないのを確認しているがマウスは検討したことがないとのことであり、来年度はマウスのアミラーぜが耳下腺からしか検出されないのを確認後、研究を進めていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
「遅れている」と進歩状況に記載したとおり、次年度使用額が生じた理由は、令和3年度に予定していた研究が計画通り終了しなかったためである。 理由としては、唾液分泌量の測定方法について考え得る方法を全て検討しているあいだに時間が経過し、実験が予定通り進まなかったので本年度に必要であった染色用品などの消耗品を購入するまでに至らなかったことが挙げられる。 使用計画としては、研究計画調書に記載した手順通りに実験を進めていくため、次年度使用額は、チューブ、ピペットチップなどのプラスチック用品、および麻酔薬、縫合糸などの消耗品に使用する予定である。
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