研究課題/領域番号 |
21K10072
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
清水 慶隆 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (10294597)
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研究分担者 |
貞森 拓磨 広島大学, 病院(医), 研究員 (40437611)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電子聴診 / 呼吸音 / 嚥下音 / 呼吸異常 / 気道閉塞 / 誤嚥 / 呼吸モニタリング / 音響解析 |
研究実績の概要 |
鎮静中の気道開通性を維持するためには頭部後屈顎先挙上、スニッフィングポジションなどの頭位保持が有効な手段であることは周知の事実である。しかし一方で, 唾液や水分嚥下の観点からみると 気道開通を促す体位は必ずしも嚥下に対して有利なく、鎮静中の体位管理は“息のしやすさ”と唾液や水分喋下のしやすさを両立する必要があるが、体位管理が不適切な場合、唾液または水分感下の代償機能が作用しなくなり鎮静中の誤嚥やむせの原因となる。本研究課題は鎮静中の呼吸異常を生体音解析で診断するために必要な音要素の特徴解明を目的としているため、呼吸音や嚥下音を含んだ複雑音を空気伝搬(気管内腔や口腔)、骨伝搬(硬組織)、組織伝搬(軟組織)、外部伝搬(体表経由)の4つの経路から伝搬される音要素の判別を行うために必要な音響解析を行い、歯科鎮静時に発生する生体音の伝搬経路と音の特性を明らかにすることで、歯科鎮静時の呼吸異常を覚知するための呼吸音モニタリングの方法を検討する。次に臨床研究で実際の歯科鎮静患者から生体音を採取し、得られた音声データーを音圧・周波数・連続性・減衰率の4つの要素について分析を行い、歯科鎮静時の環境ノイズを含めた複雑音の特徴を明らかにする。具体的には生体音を正確に識別するためには、音圧(音の大きさ)のみの解析では不可能で、音の高低(周波数解析)や音の震え(連続性)や大きさの変化(減衰率)など、音の特徴をさらに細かく捉える必要があるが、歯科診療環境のノイズはその障害となるため、種々の治療器具や環境別に周波数解析を行い、さらにブラインド信号源分離や逆位相システムのを活用等を用いて、歯科治療ノイズが発生下している状況でも呼吸音を可能な限りクリーンに識別するための方策を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
体位の変化による息のしやすさや唾液や水嚥下のしやすさを生体音モニタリングで適切に管理することを目的に、空嚥下と水嚥下の際に発生する流入音の特徴を検証した。分析結果から嚥下の音解析を行うためには1秒未満の聴診区間(インターバル)で音要素を識別する必要があることが明らかとなり、聴感もしくは音響解析システムでの定量化は困難であるとの結果が得られた。そこでAIを用いた音響解析システムの音要素識別を利用し、体位別に呼吸音と嚥下音の解析を行い嚥下音の特徴量を明らかにした。次に得られた結果でAI解析アルゴリズムを最適化し嚥下定量を実施した。健康成人ボランティアを対象に呼吸音と水飲み試験による嚥下音の同時取得を行い、AI解析アルゴリズムによる音要素判定を行なった。結果として断続音成分の定量化により、姿勢と性差による嚥下強度の観察が可能であることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
鎮静中の呼吸異常を生体音解析で覚知するために必要な音要素の特徴解明を臨床研究により実施する。具体的にはマイクとコントロールユニットから構成される音響モニタリング装置を実際の鎮静患者に装着した状態で模擬的な水分貯留状態を再現し、呼吸音と嚥下音の音要素識別判定を行い、水分貯留状態を覚知可能か検証する。さらに既存モニタリングシステムと音要素判定を応用した音響モニタリング装置の性能比較を行い、歯科鎮静での音響モニタリングの有用性について検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降に実施する臨床研究は介入研究であり特定臨床研究に該当するため、申請費用、更新費用、データベース使用料を捻出する必要があり、臨床研究に使用するモニタリング装置を安価な物に変更したため。
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