研究課題/領域番号 |
21K10080
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
冨永 和宏 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40188793)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | テロメラーゼ / テロメア / 4本鎖DNA / 4本鎖DNA結合性化合物 / TERT |
研究実績の概要 |
細胞の癌化に深く関与する酵素テロメラーゼは、正常な体細胞ではほとんど発現していないため、新たな癌治療の標的として期待されている。申請者らは、染色体末端のテロメア配列が形成する DNAの4本鎖構造(G 4 構造)に、高い結合特異性を示す化合物を新たに合成し、高いテロメラーゼ活性阻害作用と癌細胞特異性を有することを確認してきた。 本研究ではこれまでの in vitro と in vivo の系による実験結果から、癌治療薬として有効性と安全性が確率されつつある新規化合物について抗腫瘍効果の作用機序解明を進めつつ、臨床応用に繋がる基礎データの取得を目的としている。 4 本鎖DNAへの結合特異性を向上させた新規化合物の口腔扁平上皮癌細胞に対する抗腫瘍作用の解析を行った。結果としては、SAS 細胞を環状ナフタレンジイミド誘導体(cNDI-ch)および環状アントラキノン誘導体(cAQ-mBen)にて処理すると、濃度依存的に細胞増殖が抑制された。この時、caspase-3およびPARPタンパク質の切断がウエスタンブロット法により観察されたことからアポトーシスが誘導されていることが示唆された。また処理時間に応じた遺伝子発現量の変動が観察された。酵素テロメラーゼ遺伝子 TERT の発現量は一過性に減少し、一方、がん原遺伝子ファミリーである Myc 遺伝子の発現量は一過性に大きく増加した。 4本鎖DNA結合性新規化合物は、培養癌細胞にアポトーシスを誘導し、その機序に TERT や Myc などの遺伝子発現の変動が関与する可能性が示唆された。今後の見通しとして網羅的解析で大きな変動を認めた他の遺伝子群についてもリアルタイム PCR 等による発現変化の確認を行い、2種類の4本鎖DNA結合性新規化合物が癌細胞にアポトーシスを誘導する機構について、違いの有無を含めて解明の手がかりを得たい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SAS 細胞(口腔扁平上皮癌の細胞株)を4 本鎖DNA結合性新規化合物である環状ナフタレンジイミド誘導体(cNDI-ch)および環状アントラキノン誘導体(cAQ-mBen)にて処理した結果、処理時間に応じた遺伝子発現量の変動が観察された。酵素テロメラーゼ遺伝子 TERT の発現量は一過性に減少し、一方、がん原遺伝子ファミリーである Myc 遺伝子の発現量は一過性に大きく増加していた。4 本鎖DNA結合性新規化合物は、培養癌細胞にアポトーシスを誘導し、その機序に TERT や Myc などの遺伝子発現の変動が関与する可能性が示唆された。この結果は本研究の目的の一つである4 本鎖DNA結合性新規化合物の癌細胞に対する作用機序を明らかにするという観点において意義あるデータと捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
①cNDIおよびcAQ処理細胞を用いた網羅的遺伝子発現解析と標的候補分子の挙動確認 異なる時間・濃度の 環状ナフタレンジイミド誘導体(cNDI)および環状アントラキノン誘導体(cAQ)で処理した癌由来細胞株における発現遺伝子について、未処理細胞における発現遺伝子との差異を網羅的に解析する。その際、環状構造とする置換基をもたない AQ などもコントロールに加えて、DNA G4 構造への結合特異性の向上の効果の検討も考慮する。得られた遺伝子発現変化のプロファイリングから標的遺伝子や影響を受けるシグナル経路の候補を抽出し、詳細な作用機序解明につながる以後の研究の方向性を決定する。 ② cNDIおよびcAQ の薬物動態の解析 試験管内での物性的安定性についてはデータを得ているが、投与後の体内における安定性に関する知見はない。血中の cAQ 量を測定する系を連携研究者の竹中博士らの協力のもと確立し、マウスその他の動物に静脈内投与した化合物の経時的な変化を解析する。 ③ ラットを用いた一般毒性試験 化合物をラットに対して静脈内投与し、毒性について健康状態を一定期間(急性・慢性)観察後に剖検し、各臓器への影響を生化学的および病理組織学的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は4本鎖DNA結合性化合物の作用機序について集中的に研究を行った。次年度は化合物の毒性について検討する目的でラットを用いた単回投与毒性試験を行う予定であり、その研究に科研費を使用する。
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