研究課題/領域番号 |
21K10082
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小柳 裕子 日本大学, 歯学部, 准教授 (20609771)
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研究分担者 |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 教授 (00300830)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イソフルラン / 大脳皮質 / 抑制性シナプス伝達 / ホールセル・パッチクランプ法 |
研究実績の概要 |
大脳皮質において,吸入麻酔薬イソフルランの抑制性シナプス伝達修飾作用を検討した。実験には2~4週齢のVGAT-Venusラット(両性)を用いた。通法に従い大脳皮質を含む急性脳スライス標本を作製し,島皮質においてマルチ・ホールセル・パッチクランプ記録を行った。記録細胞はVenusタンパク発現の有無により抑制性介在ニューロンと興奮性ニューロンである錐体細胞に弁別した。抑制性介在ニューロンはさらに電気生理学的発火特性によりfast-spiking細胞とそれ以外のものに弁別した。Fast-spiking細胞から錐体細胞へ抑制性シナプスを形成している細胞のペアを見つけ出し,シナプス前細胞に相当するfast-spiking細胞を電気刺激した際にシナプス後細胞に相当する錐体細胞から記録される単一抑制性シナプス後電流(uIPSCs)に対するイソフルランの修飾作用を検討した。その結果,イソフルランはuIPSCsの振幅を増大させる傾向が観察された。しかし一部の細胞で,イソフルランによるuIPSCsの増強がイソフルラン投与終了後も15分以上にわたって持続するあるいはさらに増強する現象が観察された。本実験では揮発性の高いイソフルランを一定の濃度で投与するため,シリンジポンプ,ガスタイトシリンジ,およびガスタイトチューブを用いた灌流システムを用いているが,本システムを用いた際にスライスへの酸素供給が変化することでuIPSCsの振幅が変化する可能性が考えられた。そのため動物用気化器を用いて酸素と一定濃度のイソフルランを灌流液に添加させるシステムを再構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験室が移転に伴い一時閉鎖となった。そのため本研究で使用している遺伝子改変動物の繁殖が一度終了し,新たに親ラットの譲渡からの開始となった。これにより使用動物の繁殖および供給が数か月にわたり停止したため,計画よりやや遅れて進行している。
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今後の研究の推進方策 |
動物用気化器を用いた灌流システムでは,揮発性の高いイソフルランの濃度が灌流液添加時と細胞到達時で異なる可能性があるため,アルコール分析用カラムを用いてガスクロマトグラフィを行ないイソフルランの濃度を測定する。その後Fast-spiking細胞と錐体細胞および他のfast-spiking細胞で形成される抑制性シナプスから記録されるuIPSCsに対するイソフルランの修飾作用について統計処理を行うための例数を集める。また,fast-spiking細胞以外の抑制性介在ニューロンによるuIPSCに対するイソフルランの修飾作用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遅れに伴い消耗品費において550円の次年度使用額が生じた。生じた使用額は令和5年度助成金と合わせて吸入麻酔薬の大脳皮質におけるuIPSCの修飾作用検討のための電気生理実験において消耗品費として使用する。
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