研究課題/領域番号 |
21K10083
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
里見 貴史 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (70276921)
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研究分担者 |
小林 真左子 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90706954)
近津 大地 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (30343122)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 口腔癌 / がん幹細胞 / がん関連線維芽細胞 / 腫瘍関連マクロファージ |
研究実績の概要 |
がん幹細胞(CSC)は癌の浸潤増殖や転移を促進するため、様々な細胞に液性因子を介して大きな影響を及ぼしていると考えられている。CSCに影響を及ぼす癌微小環境の構成細胞から産生される液性因子をターゲットにした革新的な口腔癌治療法の開発が待ち望まれている。 癌微小環境におけるがん関連線維芽細胞(CAF)は癌細胞の浸潤増殖や悪性化を亢進することから、癌治療の新たな標的として注目を集めている。CAFは、癌細胞から分泌されるトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)により正常線維芽細胞から誘導されたり、また、血管内皮細胞、脂肪細胞、 骨髄間葉系幹細胞もCAFに変化すると言われ、さらに一部の癌細胞がEMTを起こしてCAFに変化するとも言われている。癌の浸潤は間質のCAFとの相互作用により促進され、さらにCAFは癌細胞を直接的に活性化する他、腫瘍関連マクロファージ(TAM)等の他の間質細胞と相互作用することで、間接的にも癌の進展に深く関わることが報告されている。そこで本研究は、CSCを静止期から増殖期に移行させる重要な鍵を握るTAMと癌細胞を直接的に活性化し、さらにTAMと相互作用することで間接的にも癌の進展に関わるCAFをターゲットにした口腔癌の新たな治療法の開発を目指した研究である。 マウス同系扁平上皮癌株(SCCⅦ)を培養下に酵素処理して細胞解離剤で単一細胞化し、フローサイトメーター(FACS)を用いてCD44(+)細胞とCD44(-)細胞の分取を行った。 in vitroの培養実験で、CD44(+)SCCⅦ細胞とCD44(-)SCCⅦ細胞について遺伝子解析ならびに形態学的解析を行った。また、in vivoで、CD44(+)SCCⅦ細胞をC3Hマウスの咬筋内に移植した口腔癌浸潤モデルマウスの作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス同系扁平上皮癌株(SCCVII)を培養下に酵素処理して細胞解離剤で単一細胞化し、フローサイトメーター(FACS)を用いてCD44陽性(+)細胞とCD44陰性(-)細胞の分取に時間がかかったことが最大の理由である。現在、CD44(+)SCCⅦ細胞とCD44(-)SCCⅦ細胞について遺伝子解析ならびに形態学的解析を行っている。また、in vivoで、CD44(+)SCCⅦ細胞をC3Hマウスの咬筋内に移植したが生着不良が続き、時間を要した。ようやく生着して口腔癌(幹細胞様)浸潤モデルマウスの作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、遅れを取り戻し当初の計画通りに研究を進める予定である。 まず、マウス同系扁平上皮癌株(SCCVII)の CD44(+)細胞とCD44(-)細胞について幹細胞に特有な遺伝子の発現をin vitroで検討する。また、in vivoでC3HマウスにCD44陽性(+)SCCVII細胞とCD44陰性(-)SCCVII細胞を移植した口腔癌浸潤モデルマウスを用いて、CSF-1R阻害剤(PLX3397)やTGF-βをターゲットにした抑制薬を投与した実験群で、抗腫瘍効果や様々な液性因子について比較検討を行い、新たな口腔癌の治療法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来、計上していた in vitro 実験における実験器具、免疫組織化学染色における試薬(抗体等)および PCR プライマーにかかる費用、また、in vivo実験における実験動物の購入費用や免疫組織化学染色における試薬(抗体等)およびin situ hybridization法にかかる費用等が必要となる。
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