・骨芽細胞での古典的Wntシグナル活性を蛍光で検出するために、TCF/LEF結合配列、蛍光タンパク遺伝子配列、抗生剤耐性遺伝子配列を持つレトロウイルスを作製した。 ・EGFPマウス由来骨芽細胞を分化培養し、同一部位を数日ごとに2光子顕微鏡で観察した。結果、高い運動性と、細胞膜のBlebbingを示す立方形の骨芽細胞が存在した部位で、その後の基質の添加が起こること、基質の増大に伴い、骨芽細胞の形態が徐々に扁平化することを定量的に示した。骨芽細胞が扁平化した状態で、Wntシグナル系を活性化する薬剤BIOを添加したところ、扁平な骨芽細胞が再び立方形へと変化し、激しく移動することを確認した。さらに、対照群と比較して基質の形成が増大することを定量的に示した。 ・BIOや、ビスフォスフォネートの一種であるゾレドロネート、カテプシン阻害剤であるE64などの薬剤が骨恒常性に与える影響を、骨リモデリングをin vitroで再現した実験系を用いて検討した。位置情報を含めた解析を可能とするため、視野を16分割し、各領域における基質、骨芽細胞、破骨細胞パラメータを定量化し、それぞれの相関を解析した。結果、骨吸収量と形成量に中等度の相関がみられ、吸収と形成の量的および空間的な関連が示された。また、破骨細胞パラメータと基質吸収量、骨芽細胞パラメータと基質吸収量に相関がみられた。しかし、骨芽細胞パラメータと基質形成量あるいは破骨細胞パラメータとの相関はみられなかった。これに対して解析法を改良し、細胞のセグメンテーションによってこれらの相関が示された。一方ゾレドロネートやE64ではこれらの相関が低下・消失した。ゾレドロネート投与では、吸収と形成の両者が抑制されたが、それらの量的・空間的相関は保たれていた。一方、E64投与では、この相関がほぼ消失し、カテプシン阻害はカップリングを乱すことが示唆された。
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