研究課題/領域番号 |
21K10090
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤尾 正人 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (90612804)
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研究分担者 |
日比 英晴 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90345885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨再生 / 幹細胞 / 骨延長 |
研究実績の概要 |
実験初年度として、Netsin-GFPトランスジェニックマウスを使用し、脛骨骨延長モデル、骨折モデルでの、骨格前駆細胞(Skeletal Progenitor Cell; SPC)の動態解析を行なった。動態解析は凍結非脱灰標本を用いて組織学的に行った。これは後の実験で行う免疫染色において、抗原性の維持に有利となるためである。その結果、特に週齢数の少ないマウスにおいてNestin陽性SPCが軟骨成長板などの骨成長部位あるいは、骨治癒部に多く観察された。骨延長モデルでは延長開始4日後の延長間隙の仮骨中で観察された。骨折モデルにおいては骨膜部に多く観察された。SPCは週齢が進むにつれて数が減っていくことがわかった。次に、骨延長モデルにおいて、組織再生に重要な働きを持つと考えられている間葉系幹細胞(MSC)、血管内皮前駆細胞(EPC)の動態解析のため、VEGFレセプター2、CD34、CD31、PDGFレセプターα、Leptinレセプターに対する抗体を使用して、免疫組織化学染色をした。その結果、VEGFレセプター2/CD34共陽性のEPCが骨治癒に先立ち、延長期間の中期から延長間隙に集積してくること、その後、血管網の構築に関与することが示唆された。EPCとSPCとの関連については今後の検討課題である。骨延長モデルから採取したサンプルを用いた遺伝子発現解析(real time PCR)において、組織再生を活性化させる因子として注目されているHigh Mobility Group Box Protein 1(HMGB1)の発現パターンを解析した。今後、HMGB1とSPCやMSCとの関係性についても明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、トランスジェニックマウスを用いて脛骨骨延長モデル、骨折モデルでSPCの観察に成功した。ただし、観察できたのは限られた一時点のみである。SPCは骨治癒が進むにつれて分化が進み、前駆細胞としての性格が失われていくことにより、Nestinの発現も減弱していくと考えられる。そのため解析時期の検討が必要である。また、in vitroで骨分化誘導した際の抗原性の維持を確認していく。EPCの解析は比較的順調に進行している。EPCの増減について確認できており、今後はSPCとの関係性についてさらに詳しい解析をしていく。MSCの解析についてはSca-1/PDGFレセプターαを使用して行なったがSPC、EPCと比べ、陽性細胞数が少なく、解析が難しい。Leptinレセプターに対する抗体を用いて引き続き解析していく。令和5年度に計画していた幹/前駆細胞の集積に関わる因子、HMGB1が骨延長治癒に与える影響の解析を前倒しでできた。今後は各種の細胞に与える影響を解析していく。
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今後の研究の推進方策 |
全体の研究計画に大きな変更はない。SPC、MSCの解析に重点を置き実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通り進んだこと、学会がオンラインとなり旅費がかからなくなったこと。翌年度分の物品費に充当する。
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