研究課題/領域番号 |
21K10104
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
浅海 利恵子 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30548243)
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研究分担者 |
坂本 彩香 日本歯科大学, 生命歯学部, 医療職員 (00794710)
河合 泰輔 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (30350143)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CBCT / 線量測定 / 成長発育 |
研究実績の概要 |
CBCT装置の線量は、管電圧、管電流、撮影時間、撮影回転角度、ボクセルサイズ、照射領域(FOV)などの多くの撮影条件に依存するため患者線量の範囲が大きい。条件によっては、CTのように高線量となる可能性もある。歯科用コーンビームCT(CBCT)を含めた歯科のX線撮影では通常撮影条件として、大人・小人のみで設定されることが多い。しかしながら大人以上に小人では年齢や性別による顎骨の大きさや放射線感受性が大きく異なる。また、顎顔面の大きさに関しては人種による影響も大きい。CBCT画像の特徴を検討するためには、適切な被写体(ファントム、模型)を用いて撮影を行う必要がある。被写体の大きさを考慮したファントムを製作するために、日本人の小児期、特に小学生から中学生までの顎顔面部の成長発育について文献により調査を行った。上下顎骨の全体的な大きさを調査するために、特に頭蓋長(頭蓋の前後的長さ)、頭蓋幅、下顎骨体長、下顎頭幅、下顎角幅を参考にした。 CBCT装置(装置1:パノラマX線撮影との複合機)を用いて、管電圧および管電流の違いによる線量を測定した。線量測定は半導体線量測定装置を用いた。撮影条件は、管電圧(70~100kV)、管電流(2~8、9、10mA)、撮影時間(360°スキャン、平均17.84秒)とした。管電圧、管電流の上昇と共に線量はほぼ比例して上昇していた。装置により管電圧や管電流を同一にしても照射されるエックス線の線質(どのようなエネルギーのエックス線なのか)は異なる。そのため、他装置(装置2)と、管電圧、管電流を同一にし、線量測定を行い、線質を比較した。装置1は装置2と比較し、線質が硬かった(全体的に高いエネルギーのエックス線が発生していた)。CBCT撮影による被曝を考える上で、装置から発生するエックス線の特徴を把握することが大事であると今回の結果から確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
画質評価のためのファントム(模型)を作製するために、日本人小児の顎骨の大きさを抽出するために文献のデータから、頭蓋長(頭蓋の前後的長さ)、頭蓋幅、下顎骨体長、下顎頭幅、下顎角幅などを調べた。しかしながら、文献の数が少なく、データは20年以上前のものであった。そのため、文献のデータだけでは現在の小児の顎骨の特徴が反映されているのか疑問が残る。そのため、現在の小児の特徴を抽出するためには臨床画像(セファロ画像)から計測を行い、その結果を踏まえてファントムを作製する必要があると考えたため、ファントムの作製が出来ていない。 CBCTの線量測定に関しては、他施設にて線量測定を行うことが困難だったため、自施設の装置のみで行った。CBCTの線量測定を行っている文献検索により、他の装置の情報を収集した。しかしながら、測定方法が異なる、あるいは求めたい情報が不足している文献が多く、更なるデータの収集が必要である。 画像評価に関しては、画像評価用ファントムの画像でランドマークの解剖学的構造物の視認性とノイズをVAS (Visual Analogue Scale)で評価する予定だが、ファントムが作製出来ていないために行っていない。
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今後の研究の推進方策 |
小児の顎顔面の成長発育に関する文献調査では、文献数が少なく、20年以上前のデータが中心であり、現在の状況と異なる可能性がある。そのため、上下顎骨の大きさの調査のために、矯正歯科を来院した患者(小・中学生)のセファロ画像を計測する。患者データの使用に際し、倫理申請を行う。文献データとの比較を行う。文献のデータおよび臨床データを踏まえて画像評価を行うための大きさの異なる撮影用ファントムを作製する。 自施設の装置では線量低減機能や180°撮影も付帯されているため、これらの条件も加えて線量測定および撮影画像の評価を行う。線量測定に関しては、複数の線量測定装置を用いて行う。CBCT装置は数多く販売され、すべての装置の線量測定は困難である。加えて装置により撮影条件は様々である。そこでCBCTの線量測定を行っている文献データを加えて検討する。 画像評価に関しては、画像評価用ファントムの画像でランドマークの解剖学的構造物の視認性とノイズをVAS (Visual Analogue Scale)で評価する。構造物とノイズの評価結果、構造物とノイズの評価結果の相関を、撮影条件毎に検討する。疾患(撮影目的)によって画像に求める質が異なる。そこで矯正、口腔外科、歯内療法などの専門分野の臨床医に画像の評価に関して協力を得る。臨床画像から目的ごとに求められる画像の質を抽出する。これまでに撮影された疾患のCBCT臨床画像の使用に際し、倫理申請を行う。並行して、CBCT専用機および複合機を含めた他施設のCBCT装置に関しても、特に国内メーカーの装置を中心に自施設の装置で行った方法で線量測定およびファントム撮影を行う。画像評価に関して、目的ごとに求められる画像の質を考慮した評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンラインとなったため研究代表者、分担者共に旅費が生じなかった。また、他施設での線量測定の実施が困難だったため、旅費に加えて装置運搬費等がなかった。また、直接経費が当初予定していた金額より下回ったため、購入予定の物品を変更した。購入した物品の金額が低くなり、使用額に差が生じた。 次年度には、学会および線量測定等を他施設で行う予定なので前年度の使用しなかった分を充てる。物品に関しても、申請時とは変更する予定であり、前年度の未使用分を含めて使用する。
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