研究課題/領域番号 |
21K10107
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 奈湖 (間石奈湖) 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (00632423)
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研究分担者 |
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
樋田 泰浩 北海道大学, 大学病院, 准教授 (30399919)
篠原 信雄 北海道大学, 医学研究院, 教授 (90250422)
大廣 洋一 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40301915)
松田 彩 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (60514312)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん / 転移 / 腫瘍血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
転移は予後を左右する重要な因子であり,がん治療において転移の予測やその制御は重要である.申請者らはこれまで腫瘍血管を裏打ちする腫瘍血管内皮細胞の異常性について検討し,腫瘍血管内皮細胞由来液性因子によりがんの転移が促進することを報告した.したがって,腫瘍血管内皮細胞は単なる血行性転移の経路の入り口となるだけではなく,積極的にがんの悪性化にも影響を与えうることが示唆された.がんの転移は,原発巣での浸潤ならびに血管内侵入,血管内の移動,転移先臓器への漂着,転移先臓器での増殖・転移巣形成という複雑なカスケードを経て成立する.異常性を示す腫瘍血管内皮細胞は,転移の初期段階だけではなく,さまざまな過程において関与する可能性があるのではないかと考えた.最近,がん組織内で腫瘍血管内皮細胞ががん細胞と細胞塊を形成することが示唆されている.実際,手術摘出がん組織標本において,血管腔内に血管内皮細胞で囲まれる細胞塊が観察された.そこで本研究では,血液中で腫瘍血管内皮細胞ががん細胞と細胞塊を形成し,転移促進などがんの悪性化に関与すると仮説を立て,腫瘍血管内皮による新たながん悪性化促進機構を明らかにすることを目的とした.手術摘出組織標本を用いて,血管腔内における細胞塊をH-E染色ならびに血管内皮マーカーCD31の組織免疫染色で可視化し,評価した.腫瘍組織の血管腔内に血管内皮細胞で構成される細胞塊が存在することが示唆された.がん患者血液中に細胞塊が存在するかどうか,ショ糖密度勾配遠心法で単核球分画を濃縮し,赤血球を除いて検討したところ,UEA-1レクチンで染色される血管内皮細胞を含む細胞塊が検出された.さらに,Poly-HEMA coatingした非接着カルチャープレート上でがん細胞と血管内皮細胞を共培養して細胞塊を形成後,そのphenotypeについて検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
手術摘出腫瘍組織の切片の入手に時間を要したため.また血液から細胞塊を濃縮する方法の検討に時間を要したため.
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今後の研究の推進方策 |
血管腔内で検出された細胞塊の構成要素について,組織学的に検討する.In vitroにてがん細胞塊の生物学的意義を詳細に解析する.さらにがん悪性化に関与する分子機構について,トランスクリプトーム解析を行い検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
手術摘出腫瘍組織の切片の入手に時間を要したため,組織学的解析を計画通り終えることができなかった.次年度に免染用試薬などの消耗品等を購入し解析を進める.
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