研究課題/領域番号 |
21K10109
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
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研究分担者 |
阿部 達也 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70634856)
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 講師 (10547516)
田沼 順一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20305139)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | hypoxia / HIF-1α / CD73 / pleomorphic adenoma |
研究実績の概要 |
1) CD73発現動態と腫瘍細胞の機能評価: 低酸素下での腫瘍細胞におけるCD73の機能を解析するために、siRNA法によるCD73発現抑制SM-AP細胞系を用いた細胞の増殖及び遊走能の検討を行った。これまでSM-AP1/4ともに、CD73遺伝子は通常の培養条件下に比べて低酸素培養条件下(1%O2/5%CO2/94%N2)で高発現していること、CD73の発現を抑制することで細胞増殖が抑制されることは確認し得ていたが、本年度は通常培養条件及びsiRNAを用いたCD73発現抑制下でSM-AP細胞系を培養したのちに、トランスウエルチャンバーにまきなおした後、24時間培養後の細胞遊走能について検討し、細胞遊走も抑制されることを確認できた。
2) ヒト腫瘍組織材料を用いた組織学的解析: ヒト手術外科材料でのCD73の発現パタンを確認するために、ヒト唾液腺腫瘍組織手術材料パラフィンブロック等から切片を作製し、免疫組織化学的に検討した。これまでヒト多形腺腫におけるCD73の発現パタンは確認し得ていたが、本年度はさらに種々の唾液腺腫瘍組織におけるCD73の発現パタンを検討した結果、CD73の発現パタンは疾患により異なり、腫瘍細胞性格や腫瘍間質における発現パタンに注目する必要があることがわかった。
3) CD73発現動態におけるSTAT3の影響についての検討: CD73のプロモータにあるHIF-1α結合部位の近傍にSTAT3の結合部位が存在する可能性があることから、低酸素下におけるCD73発現について、STAT3がCD73を転写誘導する可能性についての検討をおこなった。実際に低酸素培養条件下と通常培養条件下でのSM-AP細胞系におけるSTAT3の発現動態を調べてみると、SM-AP1/4ともに、通常の培養条件下に比べて低酸素培養条件下でSTAT3が高発現していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにSM-AP細胞系を用いたCD73遺伝子発現抑制による細胞機能解析で、細胞の増殖と遊走が抑制されたことから、低酸素下でのSM-AP細胞系の増殖や維持にCD73の発現が関係していることが示唆された。また低酸素下におけるCD73の発現には、HIF-1αの他にも、STAT3の影響について検討をする必要があることが想定され、今後も追加検討が必要であることが新たにわかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、CD73発現動態におけるSTAT3の影響についての検討を行うとともに、本年度実施できなかった、CD73発現抑制によるECMの発現動態の検証及びCD73発現抑制下における細胞増殖関連液性因子の網羅的解析を中心に検討するとともに、予定を早めて実施したヒト腫瘍組織材料を用いた組織学的解析を進めることで、CD73の発現が腫瘍組織において果たす役割について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施できなかった、CD73発現抑制によるECMの発現動態の検証及びCD73発現抑制下における細胞増殖関連液性因子の網羅的解析についての検討が進められなかったため、次年度にそのために必要な試薬等の購入費用を繰り越した。
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