研究課題/領域番号 |
21K10110
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
市村 典久 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (90770280)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | TUG1 / 口腔がん |
研究実績の概要 |
Taurine up-regulated 1(TUG1) はタウリン処理した網膜細胞で発現する分子として2005年に発見された比較的新しい非翻訳RNA(Long Non-Cording RNA:lncRNA)であり、肺癌や大腸癌、膠芽腫といった複数の癌種においてOncogenicに機能する分子として注目されている。 研究代表者はこれまでに公共データベース(The Cancer Genome Atlas:TCGA)を利用した解析から、TUG1が正常組織と比較して口腔癌組織で発現が有意に増加しており、中でも歯肉癌において発現が増加していることを見出した。さらに細胞株において、正常粘膜細胞(HOK)と比較して歯肉癌細胞(Ca9-22、Sa3)でTUG1の高発現を認め、TUG1をアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)でknock downすることで、歯肉癌細胞の増殖能や浸潤能、遊走能が著しく低下することを確認した。 これらの結果は、TUG1が歯肉癌に対してOncogenicに機能することを強く示唆しており、新たな治療標的としての可能性を期待させるものである。 2022年度は、マイクロアレイで同定したTUG1の標的候補遺伝子について、当初解析を予定したNF1からNLKに解析対象を変更した。これはTCGAによるin silico解析や細胞株を用いた実験を行う中で、NLKが口腔癌でOncogenicに機能することや、NLKの高発現群は低発現群と比較して生命予後に差があることが明らかとなったためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は計画した実験は概ね遂行することができた。 前年度まではTUG1の標的候補遺伝子を数種類挙げていたが、今年度はTCGAによるin silico解析や細胞株の実験から、候補遺伝子をNLKに絞ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は細胞株を用いたTUG1の機能解析に加え、NLKの機能解析や、TUG1とNLKの間に介在するマイクロRNAなどの同定を計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は前年度に引き続きCOVID-19の影響で参加・発表を予定していた学会に現地参加できなかったこと、必要な試薬・器具の在庫に余裕があったことなどが挙げられる。 そのため令和5年度で使用予定であった試薬を令和4年度分の予算で購入し、追加で実験を履行する。また、論文についても令和4年度の予算で作成、投稿する予定である。
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