研究課題
令和5年度は口腔癌の治療抵抗性に関与する代謝とエピゲノム変化を解明するための解析を進めた。酪酸刺激下でのRNA-seqによる遺伝子発現変化の結果とChIP-seq法によるH3K9Ac、H3K27Acの集積変化の結果を統合し、連動して変化している遺伝子として細胞周期に関連する遺伝子が抽出された。実際に酪酸刺激下ではRT-qPCRやウェスタンブロッド法にて同遺伝子がmRNA、タンパク質とも発現が低下していることが分かった。次に酪酸刺激によるエネルギー代謝への影響について明らかにするために、フラックスアナライザーを用いて解析を行った。その結果、酪酸で処理した口腔癌細胞は細胞外酸性化速度の低下を認め、解糖系の代謝が抑制されていることが分かった。今年度の解析結果より酪酸は口腔癌細胞においてエネルギー代謝にも関与していることが明らかとなった。研究期間全体を通して、高濃度の酪酸で口腔癌細胞を刺激すると、解糖系の抑制によりダイナミックな代謝リプログラミングが生じ、併せてヒストンアセチル化の変化を伴うエピゲノムの変化も生じることが分かった。その結果、細胞周期関連の遺伝子の発現抑制を介して、細胞周期はG1期への停止を伴って、細胞増殖が抑制されることが分かった。以上のことより口腔細菌が産生する酪酸は代謝とエピゲノムのクロストークを介して口腔癌の細胞制御に関与していることが明らかとなった。酪酸によるがん細胞制御は新たな治療戦略のひとつとなり得る可能性が示唆された。
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Oral Science International
巻: - ページ: -
10.1002/osi2.1227
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology
10.1016/j.ajoms.2023.12.007