口腔癌は罹患率が増加しており、治療抵抗性の癌の存在は生存率を低下させる大きな要因となっている。ヒト常在細菌は宿主の代謝やエピゲノムに影響し疾患の病態変化に関連している。本研究では口腔細菌が産生する酪酸に着目し、口腔癌細胞における代謝とエピゲノムの変化を捉え、口腔癌の治療抵抗性機序の解明を目指すことを目的とした。酪酸はエピジェネティックな変化を介して口腔癌細胞の細胞周期に関与する遺伝子の発現を減少させ、細胞増殖を抑制させた。またエネルギー代謝にも影響し、癌抑制的に働くことが分かった。これらの成果より口腔細菌の代謝物である酪酸を調節することは口腔癌の新規の治療戦略となり得る可能性が示唆された。
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