研究実績の概要 |
本邦における口腔がんは、高齢化に伴い増加傾向にある。口腔扁平上皮癌の治療法として、原発巣への外科療法・頸部転移巣への頸部郭清術に加え、化学・放射線療法が行われている。しかしながら、口腔がん全体の原発巣再発率は13~30%で、口腔がん全体の5年生存率は60~70%であることから、治癒率向上のための新規治療法の開発が望まれる。本邦では、骨髄異形成症候群と皮膚T細胞性リンパ腫に対し、DNAメチル基転移酵素阻害剤(DNMTi)とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)によるエピゲノム薬治療が臨床応用されている。口腔がんのエピゲノム異常は解明されつつあるが、エピゲノム薬の応用には至っていない。本研究ではこれまでに報告の無い、口腔がんのDNAメチル化異常とヒストンアセチル化異常の両面からの網羅的解析を行うことでエピゲノム異常遺伝子の同定を行い、DNMTiとHDACiを組み合わせたエピゲノム異常の修復作用による腫瘍抑制効果について検証する。 今年度はまず、DNMTiの1つである5-Azacytidine (5Aza)を用い、細胞培養における効果を検討した。舌扁平上皮がん由来細胞株SASを用い、5Azaの細胞増殖能への影響について検討した。5Azaをそれぞれ0.1, 1, 10, 20, 30μM濃度に振り分け、SASに添加し、1, 3, 7日後に0.5%トリパンブルー染色法を用いてセルカウンターによる細胞生存率の計測を行った。1, 3, 7日後の細胞増殖が、20, 30μM濃度の5Aza添加により有意な抑制効果が観察された。次いで、wound healing assayによるSASの増殖抑制効果を検討したが、有意な増殖抑制効果は認められなかった。そこで、HDACiの1つであるバルプロ酸を併用することを試みた結果、5Aza 10μMとバルプロ酸 4mMの併用において、対照群と比べ有意な増殖抑制効果が認められた。
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