研究課題/領域番号 |
21K10122
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
飯島 毅彦 昭和大学, 歯学部, 教授 (10193129)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マクロファージ / 誤嚥性肺炎 / LPS / FACS解析 / 好中球 / 免疫化学染色 |
研究実績の概要 |
細菌の菌体毒素による敗血症では活性化白血球が血管内皮障害を誘導し、続くグリコカリックス層崩壊と臓器障害が誤嚥性肺炎重症化の一因とされている。最近の研究から、グリコカリックス層の崩壊に付随した何らかの現象が敗血症重症化に必須であることが明らかとなっており、肺組織の恒常性維持の役割を持つ肺組織マクロファージおよび肺胞マクロファージと呼ばれる肺に常在する自然免疫系が重要と考え、誤嚥性肺炎モデルにおける肺の自然免疫系の変化について解析を行った。実験にはHOMA (human oral microbiota-associated)ヒト口腔細菌叢保有マウスにLPS(Lipoporysaccharide)を腹腔内投与し、敗血症を誘導し、肺炎モデルを作成した。48時間後に肺組織の免疫化学染色を行い、また、肺マクロファージはFACS解析を行った。肺の菌叢解析では口腔由来と考えられる通性嫌気性菌や好気性菌が多く認められた。肺免疫化学染色では好中球エラスターゼが肺組織に見られ、誤嚥性肺炎像を呈していた。LPS投与したマウスの肺からマクロファージを取り出し、肺胞マクロファージのマーカーであるCD45、Siglec-F、CD11bなどの抗体により染色し、FACSを行った結果、肺炎モデルでは、 CD11b・high、SiglecF・lowの肺組織マクロファージの割合は増加し、Siglec-F高発現の肺胞マクロファージの割合が減少した。以上の結果から本敗血症モデルでで口腔由来の細菌感染による誤嚥性肺炎に相当する病態を作ることができた。その肺炎の形成に伴い、肺胞マクロファージと肺組織マクロファージの分布を伴うことが示された。今後肺血管透過性の亢進も証明することにより、肺炎の病態像にマクロファージの関与を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通りに研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
近年の研究では、炎症により肺血管内皮のグリコカリックス層が崩壊すると、肺胞マクロファージが細菌やウィルスを貪食したのち肺胞内から消失することがわかっています。 その結果、肺は細菌が感染しやすくなり、誤嚥性肺炎などの呼吸器疾患が起きます。 消失した肺胞マクロファージは、肺組織マクロファージや血流から来る単球由来マクロファージに置き換えられていると考えられます。HOMAモデルは人の誤嚥性肺炎で起こるのと同様に、敗血症を誘導することで口腔から肺への細菌流入が見られ、肺における自然免疫系の変化も誘導されました。今後さらに誤嚥性肺炎形成におけるマクロファージの役割を明らかにすためHOMA肺炎モデルを用いて、遺伝子解析を含めた研修を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行は順調であるが、試薬等は当研究室の備蓄を使用してきたいため、予算額よりも今年度の使用額が少なかった。そのため次年度使用額が生じた。次年度には遺伝子解析などを行う予定になっており、繰越した予算は順調に使用される予定である。
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