研究課題
癌の転移には、癌細胞が細胞同士や細胞外基質との接着性を失った後も生存を維持できるためのanoikis回避機構が重要な役割を果たしていると考えられている。本研究では、このanoikis回避機構と高転移性の腫瘍細胞に高発現が認められ、血小板凝集作用を有するポドプラニンとの関係に着目し、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株を用いて、ポドプラニン発現量と血小板活性および凝集性との相関、ポドプラニン発現量とSCIDマウスでの肺転移形成率および造腫瘍性との相関につき検討を行ってきた。検討にはヒト舌癌由来細胞株(HSC-2)、ヒト舌扁平上皮癌由来細胞株(HSC-3)、ヒト舌癌由来細胞株(SAS)を用い、ポドプラニン発現量と血小板活性および血小板凝集性との相関を検討した結果を参考に、ポドプラニン発現細胞株に対してsiRNAを用いたポドプラニン発現抑制株の樹立を試みた。続いて、樹立したポドプラニン発現抑制株とそれぞれの親株を健常人の血液から調整した多血小板血漿Platelet Rich Plasma(PRP)またはADPにより活性化させた血小板存在下において共培養し、それぞれの細胞株の①血小板凝集性、②生存率、③細胞増殖、④細胞浸潤、⑤anoikisの差違、⑥血小板活性化因子の差違について血小板非存在下で培養したものとの比較検討を予定していた。ポドプラニン低発現細胞株に対しては、ヒトポドプラニン遺伝子を有する発現ベクターを導入し、ポドプラニン安定発現株を樹立する予定であったが、各細胞株のポドプラニン発現量に大きな有意差が認められず、ヒトポドプラニン遺伝子を有する発現ベクターを導入した細胞株との比較においても安定した結果が得られなかったため、本検討においては、siRNAを用いたポドプラニン発現抑制株の樹立を試みた。