研究課題
基盤研究(C)
低温大気圧空気プラズマ照射液が扁平上皮がんを強く傷害する一方で正常細胞はほとんど傷害しないことを発見した。また細胞傷害に伴って、ミトコンドリアが傷害された細胞核の辺縁に集まるという特異的なミトコンドリア動態変化が誘発されることを見出した。細胞死のメカニズムとしては、腫瘍細胞のミトコンドリアの中に含まれる鉄と活性酸素の反応による過酸化脂質の生成を促してミトコンドリアの中に酸化ストレスが誘発されること、この酸化型となったミトコンドリアが細胞核近くに移動して細胞核を傷害することが考えられた。
細胞生物学
本研究の学術的意義は、空気プラズマが鉄依存性経路による細胞傷害を誘導し、この経路としてミトコンドリア動態変化を介する酸化型ミトコンドリアの細胞核への接近が関与することを初めて明らかにしたことである。この成果は、空気プラズマ照射液による腫瘍標的型治療の分子基盤を提供する。このミトコンドリアの形態変化は腫瘍選択的にみられたことから、ミトコンドリアの酸化ストレス誘導は腫瘍細胞選択的な細胞傷害のための有力な標的となることが期待される。