研究課題
口腔癌の危険因子として、喫煙、飲酒、義歯などによる慢性的な刺激、ウイルス感染などが挙げられているが科学的根拠があるものは少ない。複数の因子により遺伝子異常が生じ、これらが蓄積することが発癌に関与すると考えられている。近年、頭頸部領域の多発癌の発生頻度が急増している。多発癌は同一臓器に複数発生する癌であり、口腔第1癌の加療後、口腔内の他部位、舌や頬粘膜といった同一臓器の反対側に第2癌、第3癌が発生する症例がまれに認められる。これらの口腔多発癌症例は女性に多く認め、舌よりも歯肉や頬粘膜に発生しやすいなど、通常の口腔単発癌症例の特徴である男性、舌に多いという特徴とは異なる特徴を持っている。このような臨床経験より、口腔多発癌症例は通常の口腔癌とは異なる発生因子、特に遺伝学的な異常が大きく関与しているのではないか、という仮説を考えた。本研究の目的は、口腔多発癌症例の手術標本を用いて遺伝子解析を行い、多発癌に特異的な遺伝子異常を探索することである。これにより解明した遺伝子変異に基づく治療法の選択や予後予測は、希少がんである口腔癌の治療方針決定に多大な影響をもたらすと考える。2021年度は、遺伝子解析を行う外部委託業者の選定、東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会での承認を得た。2022年度は研究責任者の新潟大学への異動があり、東京医科歯科大学との共同研究のための新潟大学倫理委員会での承認を得た。本研究は口腔多発癌症例5例15検体の遺伝子解析を行う予定である。
3: やや遅れている
倫理委員会での承認、遺伝子解析を行う外部委託業者の決定とゲノム検査を行う環境は整った。ただ遺伝子解析は当初の予定よりも高額であり、金銭的な面より5症例15検体を目標数に変更した。現時点で1例3検体は確定している。
現在、残り4症例12検体をリクルート中である。脱灰処理を行うとDNA採取が不可となるため、第2癌が歯肉や口蓋など腫瘍切除時に骨を含む症例では、脱灰処理前に病理医に確認してもらい、診断に影響がない範囲で組織採取を行うことで希少な多発癌症例を研究対象にするよう対策している。5症例15検体が揃った時点で、外部委託業者へ郵送し遺伝子解析を行う。その結果を踏まえて、学会発表、論文作成を行う予定である。
遺伝子解析費用が5症例15検体を解析した時点で170万円必要となるため、当該年度は予算をしようせず、次年度の解析用に持ち越した。
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Cancers
巻: 14 ページ: 3476~3476
10.3390/cancers14143476