研究課題/領域番号 |
21K10142
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
永田 将士 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10635791)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | OSCC / ICIs / 治療抵抗性 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌 (Oral squamous cell carcinoma: OSCC) は、医療技術の進歩にも関わらず治療成績の劇的な向上には至っていない。近年、頭頸部癌に対し免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitors: ICIs)の有効性が注目されているが、その奏効率は未だ限定的である。その理由として、OSCCのICIsへの治療抵抗性が挙げられる。しかし、OSCCを含めたHNC(Head and Neck Cancer)のICIs治療抵抗性は未だ明らかになっておらず、有用な治療予測因子もない。 そこで、本研究ではHNCにおけるICIs治療抵抗性獲得メカニズムを解明し、口腔扁平上皮癌の制御を目指した、革新的診断法・治療法の確立を目指すこととしている。 現在当科では、実際にICIsを投与を予定する患者に対し、各ポイントにて血液を採取している。また、治療前の原発腫瘍のサンプルも採取しており、各種解析を行う準備を行っている。これらを用い、腫瘍細胞におけるPD-L1陽性細胞の割合であるTPS(tumor proportion score)だけでなく、腫瘍細胞、リンパ球およびマクロファージにおけるPD-L1陽性細胞数を総腫瘍細胞数で除し、100を乗じた数値であるCPS(combined positive score)を測定し、ICIs治療効果との関連性を検討している。マクロファージに関しては、腫瘍関連マクロファージのマーカーであるCD163とPD-L1の局在を確認し、関連性の有無を確認している。また、投与前後で採取した血清中の可溶性CD163を定量し、同様にICIsの治療効果との関連を検討する。加えて、口腔癌におけるTILの分析を行い、CD8陽性T細胞の腫瘍内浸潤を定量し、細胞内のWNT/β-カテニン経路活性状況を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当科で収集している実際にICIsを投与した口腔がん患者の末梢血単核球細胞(PBMC)と、手術により切除した腫瘍検体を用いて、次世代シークエンサーでその遺伝子発現の差を比較し、ICIs感受性との関連性を分析する予定であったが、未だ施行できていない。しかしながら、現在ICIs耐性に関連するマイクロRNA解析を行っている。また、ICIsを投与した患者からPatient Derived Xenograft(PDX)モデルを多数作成済みである。口腔がん患者のPBMC からCD8 陽性細胞を分離し(Micro ビーズ法)、PDXモデルの腫瘍から細胞株を樹立、分離したCD8陽性細胞と腫瘍細胞と共培養し、ICIを投与後に培養上清をLDH Cytotoxicity assay で解析し、誘導したCTL による細胞傷害性を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
計画していたとおり口腔癌における遺伝子変異量やマイクロサテライト不安定性(MSI)、ゲノム不安定性、染色体不安定性が、ICIs耐性に関してどのような影響を与えるかを明らかにするために、当科で収集している実際にICIsを投与した口腔がん患者の末梢血単核球細胞(PBMC)と、手術により切除した腫瘍検体を用いて、次世代シークエンサーでその遺伝子発現の差を比較し、ICIs感受性との関連性を分析する予定である。また、先に述べたようにPDXモデルを用い、ICIsの細胞障害性を検討した後、in vivo 実験として、樹立した口腔がん腫瘍細胞および耐性因子を解除させた腫瘍細胞をマウスに移植する。腫瘍がある程度増大したのちに、ICI を投与し、その抗腫瘍効果(腫瘍縮小効果と生存期間)を検討する予定である。
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