研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌 は口腔癌の80%を占める疾患で、医療技術の進歩にも関わらず治療成績の劇的な向上には至っていない。近年、頭頸部癌に対し免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitors: ICIs)の有効性が注目されているが、その奏効率は未だ限定的である。当科では、実際にICIsを投与を予定する患者に対し、各ポイントにて血液を採取している。このサンプルを用いて現在使用しているICIsのマーカーである、PDL1の治療予後因子としての可能性を探索した。ELISAを用いて治療開始前の保存血清中のPD-L1陽性EVsを測定した。結果としてPD-L1 EVsは口腔癌患者血清から検出可能であった。また、PD-L1 EVsの存在はRECISTや腫瘍の分化度と関連していた。PD-L1EVs-high群ではPFS、PFS2、OSいずれにおいてもPD-L1 EVs-lowに比べて予後が不良となり、特にOSについては有意に予後が悪化していた。また、多変量解析においても、OSにおいてPD-L1 EVsは独立した予後因子であった。ICIsによる治療を受けた再発・転移性口腔癌において、PD-L1 EVsは有用な予後予測因子であると考えられた。 次に、ICI 投与OSCC患者の末梢血を用いて、 栄養指標 (OPNI, NLR) と予後の関連を解析を行った。栄養指標と末梢血中のT cell exhaustionの関連を解析した結果、高OPNI患者の方が、OS、PFSともに良好であること、低NLR患者の方がOS・PFSともに良好であることが判明し、OPNIはOS, PFSともに予後予測因子になり得ると考えられた。また、低OPNI値患者ほど、末梢血中CTLのT cell exhaustionが進行しており、栄養状態低下は、全身の免疫状態に影響を与えている可能性が示唆された。
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