研究課題/領域番号 |
21K10151
|
研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
野崎 中成 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (90281683)
|
研究分担者 |
中塚 隆介 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (90454561)
佐々木 由香 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (50823332)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 翻訳後修飾 / PARP1 / PARG / ポリADP-リボース / PARP阻害剤 |
研究実績の概要 |
本年度は、ポリADP-リボシル化サイクルに関わるPARP1およびPARGが、骨芽細胞分化過程に及ぼす影響を明らかにするために、既に臨床承認されている抗がん薬であるPARP阻害薬olaparibおよびPARG阻害薬PDD00017273処理条件下における骨芽前駆細胞MC3T3-E1の骨芽細胞分化への影響を解析した。まず、MC3T3-E1細胞におけるolaparibとPDD00017273による細胞内ポリADP-リボース(PAR)の量を解析した。olaparibは細胞内PARを十分に低下させ、一方で、PDD00017273は細胞内に過剰なPARを集積したことから、MC3T3-E1細胞において、olaparibとPDD00017273が阻害薬としての標的分子であるPARP1とPARGの酵素活性をそれぞれ低下させたと判断した。そこで、これらの阻害薬存在下でMC3T3-E1細胞を分化誘導した結果、分化誘導14、21、28日後において、olaparibはアルカリホスファターゼ(ALP)活性を低下させ、分化誘導21、28日後のアリザリンレッドS染色で評価した石灰化を抑制した。一方、PDD00017273はolaparib処理に比べてALP活性を有意に上昇させ、石灰化を促進することが明らかとなった。さらに、PDD00017273はolaparib処理と比べて、骨芽細胞分化マーカーであるOsteocalcin、Bone sialoprotein、および骨芽細胞分化過程に関わる転写因子OsterixのmRNAレベルの発現を上昇させた。以上より、olaparibによるPARP1阻害が骨芽細胞骨芽細胞分化を抑制する一方で、PDD000177273によるPARG阻害が骨芽細胞分化を促進することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ポリADP-リボシル化サイクルが骨芽細胞分化に及ぼす影響について解析を行った。PARP阻害薬olaparibは、ALP活性およびアリザリンレッドS染色で評価した石灰化を抑制し、骨芽細胞分化を抑制することを明らかにした。一方、PARG阻害薬PDD00017273は、olaparib処理に比べて高いALP活性と石灰化度を示したことから、分化を促進することが分かった。これらの結果と一致して、PDD00017273はolaparib処理と比べて、分化マーカーであるOsteocalcin、Bone sialoprotein、および骨芽細胞分化過程に関わる転写因子OsterixのmRNAレベルの発現を上昇させた。以上より、PARP1阻害が骨芽細胞分化を抑制し、PARG阻害が分化を促進することを明らかにした。この成果の一部は、国内学会で発表した。これらの結果は、「異所性骨化、骨分化におけるPARP1/PARGの微調整メカニズムがどのような役割を担うのか」という本申請課題における目的の一部を明らかにしたと考える。今後、骨芽細胞分化におけるポリADP-リボシル化サイクルの役割を網羅的に解析すると共に、olaparibおよびPDD00017273による破骨細胞分化への影響についても明らかにする予定である。したがって、本申請課題は、当初予定していた計画と照らしておおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究より、PARP阻害薬olaparibが骨芽細胞分化を抑制し、PARG阻害薬PDD00017273が骨芽細胞分化を促進することを明らかにした。次年度は、これらの結果に基づいて、olaparibによる骨芽細胞分化の抑制機構について、より詳細に解析する予定である。そのために、olaparib処理条件下においてMC3T3-E1細胞の分化を誘導し、small RNA-sequence解析を行った結果より、細胞内micro RNAの変動がどのようにして骨芽細胞への分化を抑制したのかを明らかにすると共に、分化誘導因子の包括的な解析を行う予定である。また、ポリADP-リボシル化サイクルが破骨細胞分化に及ぼす影響について解析する予定である。具体的には、破骨前駆細胞RAW264を用いて、olaparibおよびPDD00017273処理条件下において、TRAP染色やリアルタイムPCRによる破骨細胞分化マーカーのmRNAレベルの解析を行うことにより、破骨細胞分化への影響を解析する予定である。破骨細胞分化において、olaparibおよびPDD00017273による分化抑制または促進が認められた場合には、網羅的な遺伝子発現解析を行い、詳細な機序を解析する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大学費の一部を研究費として充当したため、当該基金の一部を使用せず、次年度へ繰り越した。次年度は、物品費として細胞培養関連、分子生物学実験関連の試薬に使用するほか、受託解析に使用する予定である。また、本研究で得られた成果を学会で発表するための費用や、学術誌に報告するための英文校正費として使用する予定である。
|